第18話 あたたかい
3学期が始まった。
冬休みなんて変化なくあっという間に終わっていた。
辺りは銀世界。太陽の光で雪はキラキラと輝いている。
雪焼けに気を付けないと、なんて。
僕はまだみずきさんに返事をしていない。
まだ伝える勇気がなかった。
シンプルに考えてはいるが、後はタイミングだけ。
長引く保留はかえって良くない。
早く言わないと。
「でもなー」
肘をついてぼーっとしていると。
「バカ
何かの角で頭を打たれた。
「痛ッ!」
見上げると、
教科書の角か・・・痛いなー。
「集中しろ!」
「ごめんなさい」
怒られたし、クラスのみんなに笑われた。
あーやだな。
※
放課後の図書室。
「弦大君、質問」
「何かな?」
珍しくみずきさんが僕に質問とは何だろう。
「甘いものは好き?」
「甘ったるいのは苦手だけど、普通の甘さなら大丈夫」
「じゃあ、チョコは好き?」
「普通かな」
「なるほどぉ~」
また、何かお菓子作るのかな?
試食係なら喜んで。
「ありがとう弦大君♪」
なんだったのか、この質問。
考えても浮かばなかった。
※
2月中旬のある日。
「はい弦大、
「うおっ!サンキュー!」
僕は
聡はちゃんとした箱のヤツ、ん?なんだこの差は。
「何の日だっけ?」
「はあ?昨日、バレンタインだったでしょ?」
「あー」
てことは、これは義理チョコ。
うーん、悪いけど
「優愛、お返しスッゲーのにすっからな!」
「ありがと聡!」
ん?なんか変だなー。
「なんだか仲良いね?」
「「えっ?」」
2人はキョトンとしている。
そして、大笑い。
意味が分からない。
「弦大には言ってなかったね」
「確かに、忘れてたな」
「えーっと?」
あれ?まさか、そんなことって。
「いつから付き合ってるの?」
「名探偵弦大、大正解!」
バカにされた。
「いつの間に」
「あんたがバカみたいに悩んでいた時に、それがきっかけで話している内に、聡から告白してきたの」
なんという!
「優愛がOKしてくれたから驚いたけどな!」
聡、良かったな、見習うよ。
「弦大もどうせ本命貰えるんだし、ちゃんと図書室に行くんだよ!」
あー、本当に貰えるのかな?
外れたら恥ずかしいなー。
放課後の図書室。
「はーい、どうぞ♪」
「おぉ・・・」
うん、ちゃんと貰えた。
緑のチェック柄の紙包みに赤リボンでラッピング。
「これは、開けた方が良いの?」
「出来れば」
てなわけで開けてみた。
紙包みが破れないように慎重に丁寧に包装を解いていく。
現れたのは白い箱。
開けて見ると、ふんわりと甘い香りが鼻孔をくすぐる。
「チョコクッキー」
「うん!」
ただのチョコじゃなくて良かった。
「ありがとう、帰ったら食べるね」
「ふぅ・・・良かった♪」
安堵するみずきさん。
「トリュフも考えたけど、クッキーの方が良いかなと思ってね」
「分かってらっしゃる」
「えへへ♪」
これって本命なのかな?
「これって・・・本命?」
「ふぇっ!?」
驚いてからみるみる顔が赤くなったみずきさん。
もじもじしてから一言。
「そうだよ」
あー、なんという。
「嬉しいよ、ありがとう!」
「どういたしまして!」
「お返し、ちゃんとしなきゃだなー」
「楽しみにしてるね♪」
初めて好きな人からバレンタインのチョコを貰えて、暫くは浮かれてそうだな。
大事に頂きます。
本命なら、言うしかないな。
ちゃんと言おう。
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