第16話 そうだったのか、ごめんなさい

 冬休み前。

 寒さも厳しくなってきた冬。

 委員会の仕事は校内にある観葉植物の世話のみ。

 あとは年間総括の報告の準備をしている。

 学校の事は変わりないが、個人的な問題が1つ。

 嫉妬で逃げたあの日から、みずきさんと全く話さずにいた。

 向こうもなんだか避けていて、自然と自分も遠ざける事に。

 話すきっかけがない。

 どうすればー・・・。

「はぁ・・・」

 嫌だな自分。

 悩んでぼーっとしている事が多くなり、しょっちゅう先生に怒られている。

 こんなんじゃダメなのに、分かっているのに、一歩を踏み出す力に必要なエネルギーが計り知れず、物凄く重たかった。

 もやもやの日々の中。

弦大げんた!」

 さとしが声をかけてきた。

「ちょっと良いか?」

「良いけど?」

「さっすが弦大!ノリが良いねー!」

 ガハハッと豪快に笑う聡の後ろを着いて行った。



「んー!さみぃーな!でも太陽燦々であったかいなー!」

 屋上に来ていた。

「なんで屋上?」

「まあまあ!」

 ニコニコ笑っている聡。怪しい。

 すると、ガチャリと屋上の戸が開き誰かが入って来た。

「聡、ありがとねー!」

「おーよー!優愛ゆめ!」

 優愛と・・・みずきさん!?

「なんで・・・」

「弦大、君・・・」

 みずきさんも凍りついたように固まっている。

「はい、みずき!」

「わわっ!」

 優愛はみずきさんの背中をぐいぐい押して、僕の正面に立たせた。

「後は2人で話し合いなさい」

「誤解を解けよー」

 優愛と聡はそそくさと屋上から去った。

 2人きりになった僕達には、気まずい空気が流れている。

 これは僕から言った方が良いのか?だよね。

 よし、せーの!

「「あの!」」

 2人して同時に言葉を発した。

「「あっ」」

 また同じ事を。

「えと、弦大君どうぞ」

「いや、みずきさんから」

 何だ何だ?この譲り合い。

「じゃあ・・・私、から・・・」

「は、はい・・・」

 みずきさんから話してくれるようだ。

「あの、あの日、えと、弦大君を呼んだのに、逃げちゃったじゃん?どうして?」

 直球の質問にドキリと心臓が跳ねた。

「それは・・・その・・・」

 互いに俯く。正直に言って良いのかな。

「みずきさんの隣に、男子生徒が、居たから・・・」

「えっ?」

「邪魔したら、悪いなーと・・・」

 キョトンとしているみずきさん。

 その顔を見て僕も釣られて間抜けな顔になる。

 見詰め合う事、数十秒。

「ふふっ・・・ふふっ・・・」

「えっと?」

「あはは!」

 あ、アレ?

「ごめんごめん!でも、おっ可笑しくて!」

「えーっとー?」

「まず誤解を解こう!」

 あれあれれ?

「あの男の子は1年生で図書委員で、返却された本の位置が分からなくて私が教えてたの!」

 おっ?

「それで彼が『置くとこ目の前なのに見えないとかバカッスね!』て笑ってたから、私も釣られて笑ってたの!」

「えー?!」

 やっぱり自分がバカだった!

「ごめんなさい」

「良いよ良いよ」

 すると、みずきさんはもじもじとし出す。

 頬も少し赤い。

「もしかして・・・焼きもち?」

「えー、そのー」

 恥ずかしくて目を逸らす。

「そかそかー」

 なんか、嬉しそうに見えるんだが?

「嬉しい・・・なぁー」

 う、上目遣い・・・グハッ!

 ドキドキが止まらない。死にそうだ。

「良かったぁ、誤解が解けて」

「僕もです、はい」

「優愛ちゃんと弓河ゆみかわ君にお礼をしなきゃだね」

「だなー」

 それから、みずきさんと一緒に、優愛と聡へのお礼をどうするか話ながら屋上を後にした。


 本当にごめんなさい、ありがとう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る