初めての遊園地(運命の輪の正逆位置)
「ねえ二人とも、たまには三人でお出かけしない?」
私のこの言葉に、二人は顔を見合わせ、それぞれのスケッチブックにさらさらと書き込むと一斉に私に見せてくれた。
『それは名案ですね、どちらに行きましょうか?』
『ご厚意はうれしいのですが、ご迷惑ではないでしょうか?』
正位置と逆位置で考えていることが違うんだなと改めて思いつつ、私は二人にあるチケットを差し出した。この日の為に用意しておいた、遊園地のチケットである。
彼女たちは言葉を話すことが出来ない為、外出をあまりしない。故にこのような人の多そうなところは行ったことがない。
『これは、遊園地ですね。とても楽しそうです』
『ほかの方のご迷惑に、ならなければいいのですが……』
「三人で行きたいなって思って、用意しておいたの。一緒に行きましょう?」
翌日、私達は遊園地に向かった。私も来るのは久しぶりで、内心とてもワクワクしていた。遊園地の名物ともいえるジェットコースターや、ゆっくりと登りながら高いところを一望できる観覧車など、様々なアトラクションがある。アトラクション系は苦手な人もいるが、この二人はどうだろうかと考えていると、二人そろって私の袖を少し引っ張り、ある場所を指さした。
彼女たちの指の先には、音楽とともに回転しながら上下に動く、メリーゴーランドがあった。余談だが、メリーゴーラウンドということもあるらしい。どうやら二人が持ち合わせる『輪』の部分に関係性があると感じたようで、きらきらとした目でじっと見つめている。
「あれはね、メリーゴーランドというの。乗ってみる?」
私の問いかけに二人はうなずく。係の人に誘導され、好きなところに座るように言われる。二人は馬に乗るか馬車に乗るかで迷っているようで、ぐるぐる回っては止まりを繰り返していた。
「馬さんに乗ると上下に動くから、上下に動くのが嫌なら馬車の方がいいと思うよ」
そう言うと、彼女たちは私の前と後ろの馬にそれぞれ乗り、緊張したような面持ちで動くのを待っていた。係の人から注意事項を聞き、いよいよ音楽が流れ動き始めた。ふと、彼女たちの表情を見ると、とても楽しそうにしており、係の人が手を振っているのに気が付くと、笑顔で手を振り返していた。
「お疲れ様、初めてのメリーゴーランドはどうだった?」
降りてから感想を聞くと、二人はそれぞれのスケッチブックにこう書き込んだ。
『回転しながら浮き沈みするあの動きが、人の人生そのものを表しているかのようでとても不思議でした。いいことも悪いことも含めて人生なんだと、改めて実感致しました』
『回転しているときに見る景色と、止まって見る景色とでは見え方も全く異なるのですね。時には立ち止まって物事をよく知ろうとする大切さを、改めて考えさせられました』
やはりカードというだけあって、目の付け所が違うんだなと感心しつつ、純粋に楽しんでくれたことに安堵した。
その後も、回転するタイプのアトラクションがすっかり気に入ったようで、コーヒーカップや観覧車、空中ブランコなど一通りのアトラクションを楽しみ、心配していた絶叫系も難無く楽しんでくれた二人は、非常に満喫した時間を過ごしたようであった。
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