雨の日の変貌(星の正位置)
雨……植物に潤いをもたらす一方で、場合によっては災害をもたらしたり、気分を沈めてしまったりする。
「……」
「あの、スターちゃん……?」
「……なぁに、主……?」
「いやあの……き、今日は星が見えないなって……」
「……そうだね、だって今日は雨だもん。星なんておろか、月も空も見えないんだから……」
どうやら私は地雷を踏んでしまったようだ。普段とびっきりの笑顔を見せ、明るい声で話しかけてくれるスターちゃんだが、雨や曇りの日になると途端に豹変する。
先ず口数が圧倒的に少なくなり、見るからに暗く重い表情になる。
普段彼女が纏っている光のオーラは見る影もなく、代わりに漆黒色をした闇のオーラを纏っている。
「そ、そうだよね……見えないよね……」
「……ねぇ、主。主は……雨の日、好き……?」
突然、スターちゃんからとんでもない質問をされた私は、一気に思考が停止した。これはどちらで答えるのが正解なのだろうか。
見るからにスターちゃんは雨の日に落ち込んでいる。仮にここで私が雨の日を好きだと言ったら、スターちゃんはどんなことをするだろう。普段の彼女なら、笑って流してくれるだろうが、今は違う。
返答に困っていると、彼女は少しだけ表情を和らげてこう言った。
「私はね……雨の日は嫌いじゃないよ? 大好きな空も、星も見えなくなっちゃうからすごく寂しいけど……それでも雨は好き。だって雨は、植物たちに水分を運んでくる。歯に滴る水滴が、月の光を浴びるとキラキラと光って凄く綺麗で幻想的な景色を作り出す。それは雨が降ったから見える光景だから……だから私は雨の日は寂しくなるけど……雨のことは嫌いじゃないんだ」
彼女は雨を嫌っているわけではない。それどころか、雨の存在を肯定し雨を好きだといったのだ。
彼女の表情だけを見ると、好きという感情は読み取れないが、彼女の呟いた言葉を聞くと、雨に対する尊敬の意が伝わってくる。
きっと彼女のこの態度は、極限の寂しさからくる普段の彼女の明るさの裏返しなのかもしれない……それにしては豹変しすぎている気がするが、それはさておき。
「そうだね、雨上がりの空には時々虹もかかるからね! ねぇ、もし雨が上がったら……虹が出てるか見に行かない?」
私の誘いに、彼女は普段見せてくれる笑顔で力強く頷いてくれた。嗚呼やっぱり彼女には笑顔が一番似合う……そう思う私だった。
雨が上がり外に出ようと準備していると、デビちゃんがボソッとこう言った。
「この後嵐がくるって言ってたぜ……? 当分外出は無理だろ」
嵐が過ぎ去るまでの間、スターちゃんの元気が回復せず、重苦しい空気が漂っていたことは、言うまでもない。
「流石に嵐は……苦手、かな……」
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