#6
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「まぁ、父親の連れ子じゃあ、愛情薄いのも仕方ないっすよね。それにしても、娘と6つしか違わない女を後妻に迎えるなんて、父親もどうかしてるっすよ。その父親も、トラックの運転手だったらしいっすけど、二年前に交通事故で死んだりしてるし、何だか昼ドラの匂いがプンプンしますね」
軽口を叩きながら圭が缶コーヒーを大樹に手渡す。ブラックのコーヒーを口に流し込み、大樹は何度吐こうかと思った水原加奈への悪態を胃の奥へと押し込んだ。
「門倉の母親とは、えらい違いだったな」
「そっすね、あそこんちも桃慈君が幼い頃に父親を亡くして以来、ずっと母子家庭でやって来たみたいなんで、愛情のレベルが違うって感じでしたよね」
「流石の情報網だな」
「下調べは基本っすから」
「他人の家の家庭環境をとやかく言うつもりは無いが、母親だけを見たら、水原桜の自殺は肯けても、門倉桃慈の自殺は首を捻らざるをえないな。やはり、恋人の自殺を止める為か、それとも心中か……」
「あれあれ? ぐっさん、刑事が先入観で物事を見るのは良くないっすよ」
「……まさかお前に諭される日が来ようとはな」
「あ、ぐっさん、項垂れるのは後々! 出て来ましたよ!」
大樹と圭が目を向けた先には、ゲームセンターから出てくる4人の集団がいた。
「あいつらが、お前の言っていた見返りか?」
「そっす」
「何者だ?」
「あの真ん中のベリーショートが菱川莉子。菱川グループ総帥、菱川雷太の息女っす」
「菱川グループって、あの財閥のか?」
「そうっす、ごりごり押せ押せの商売で、天下り、下請けいじめ、などなど悪い噂がとにかく絶えない、総帥の菱川雷太一代で大きくなった黒い財閥っすね」
「それはお前の記事が載ってる雑誌で書かれてる様な、かなり斜めから見たイメージだろうが。確かに社員のリストラや買収などの強引な経営方針もあったかもしれんが、実際は多角的て堅実な経営が実を結んだって見方もあるだろう」
「周りにいるのはその取り巻きっすね」
「無視か」
「隣のロングヘアーの女の子が伊勢愛美、その周りの男二人の、ガタイのいい方が田村昌司、チャラい方が妹尾研二っす。高校に入ってから、菱川の財力目当てで、いつもつるんでるって感じっすね。あんまり詳しくは調べては無いっすけど、取り巻き連中の親達も、菱川グループとはおともだちの関係らしいっすよ」
「水原や門倉との関係性は?」
「菱川と門倉は小学校の、菱川と水原は、中学の時の同級生だって話っす。高校に入ってからは、今の取り巻き連中のお姫様ですね」
「……関係性はそれだけか?」
「それだけっちゃそれだけらしいんすけど、中学の頃は、水原桜も菱川莉子と仲良しだったらしいっす。でも、周りの同級生とかに聞いても、なんかその事について、みんな触れたがらないんすよね。ジャーナリストの勘が騒ぐんすよ。何かあるなって」
「三文ライターのだろ? まぁ、当たってみて損は無いか……」
大樹は手にしていた缶コーヒーを飲み干し、近くのゴミ箱に捨てて、四人の下へと近づいていった。
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