Tale27:チャラい男は好きません
チャラ赤髪とハゲハンマーは、意外にもおとなしくテーブルに着いた。
なにを考えているかわからないから警戒はしているけれど、セッチさんに迷惑をかけるわけにもいかない。
「……ご注文は、なににしますか?」
「あの日の膝蹴りを、もう一度味合わせてほしい……かな」
なんだかかっこよさげに微笑みながら、チャラ赤髪はマジで気持ち悪いことを言ってきた。
ウインクも気持ち悪いし、私の太ももをちらちら見ているのも気持ち悪い。
「ハラスメント報告の画面が出ていますが、これ以上気持ち悪いようなら報告しますよ?」
「ちょっとぉ、触ってもないのに出るわけないっしょ? っていうか気持ち悪いなんてひどいなぁ、もっと言ってぇん」
チャラ赤髪はヘラヘラと笑いながら、そんなわけない、と手を振っているが。
そうなの? じゃあ、この黒い画面は間違い?
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該当プレイヤーのハラスメント行為を報告しますか?
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「ぽちっ」
「――なぁっ!? 審査中? どうしてっ、なにもしてないよぉ!?」
テーブルの上の空間を見ながら、チャラ赤髪は
おそらくチャラ赤髪には、“ハラスメント報告されたから審査するよ”みたいな画面が見えているのだろう。
数瞬の後、私に見えている方の画面内容が切り替わった。
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該当プレイヤーの行動を分析した結果、
ハラスメント行為として認められませんでした。
今後も、迅速な報告にご協力ください。
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おー、けっこう早く判断が下されるのね。
「紛らわしいことすんなって怒られたわ……」
安心したかのように、チャラ赤髪は椅子の背にもたれて息を
ふふっ、いい薬だったんじゃないかな。
「相手がどう思うのかが重要なのよ。本当に女の子が好きなら、舐めるんじゃなくて愛でるようにしなさい。せっかく綺麗な花なのに、枯れたらもったいないでしょ?」
「……チッ、意味わかんねーこと言ってらぁ。あーあっ、説教受けに来たわけじゃねーんだけどな」
チャラ赤髪は不満そうであったが、さっきまで感じていた気持ち悪い視線は多少気にならなくなる。
私の溜飲が下がったからそう感じたのかもしれないけど。
まあ、あとはピアスを引き千切って髪を黒く染めれば私の前に存在していてもいいかな。
「じゃあ、なにしに来たの?」
まさか、本当にスパッツを拝みに来たわけではないだろう。
そういうのに興味がなさそうなハゲハンマーもいっしょだし。
ちなみに、ハゲハンマーはチャラ赤髪の向かいに座っていた。
そして、さっきからずーっとスラリアにそのつるつるの頭をぺしぺしと叩かれている。
城壁内部の街中はPK不可能エリアに設定されているらしいから、ダメージは入らない。
しかし、あれはそうとう鬱陶しいはずだ、私なら怒っている。
それなのに、ハゲハンマーは腕を組んで押し黙ったままスラリアの蛮行に耐えていた。
「リリアちゃん、今度のイベントのトーナメント表、見てねぇの?」
「……ああ、見たけど」
私は嘘をつく。
シキミさんと当たることが決まっているので、別に見ていなかったのだ。
「すごい確率だよな、まさかシキミくんとリリアちゃんが一回戦で当たるなんてな」
感心したように言うチャラ赤髪。
運営が仕組んでいるなんて思わないのが当たり前とはいえ、なんか素直で可愛い。
ドキリとしたことを悟られないように、なるべく平静を装った。
“仕組まれたこと”などとバレてしまったら、リリアに申し訳がないからね。
「それで、小悪党よろしく、試合に出るなとか言いに来たの?」
「あははっ、逆だよ逆。ちゃんと出場してくれるか、確認しに来たのよ」
「……それって、どういうこと?」
シキミさんを恐がった私が逃げ出すんじゃないかと思ったのかな。
でも、不戦勝でも勝ちは勝ちなんだからよくない?
「シキミくんがリリアちゃんと戦うのを楽しみにしててね」
もし逃げたら殺すってさ、とチャラ赤髪はなんでもないことのように告げた。
この世界がゲームだと理解していても、“殺す”という聞き慣れるはずのない言葉を向けられるのは恐ろしい。
背筋が凍るのをごまかすように、私は自分の腕をさするのだった。
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【名前】リリア
【レベル】10
【ジョブ】テイマー
【使用武器】スライム:習熟度5
【ステータス】
物理攻撃:25 物理防御:44
魔力:35 敏捷:15 幸運:25
【スキル】スライム強化、なつき度強化、勇敢
知恵の泉、魅了、同調、不器用
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