Main Tales
Tale1:女神様が可愛すぎてつらい
『おかえりなさい、リリア様』
「ぷにゅっぷにゅ」
開始フェイズのスキップを行わなかったら、リリアのいる真っ白な空間に降り立っていた。
リリアの腕の中で、スラリアがぷにぷに揺れている。
心なしか、私が抱いているときよりも窮屈そうだけれど。
「えと、ただいま……です」
リリアの顔をまっすぐに見ることができずに、私は口ごもる。
女神様だという認識が、リリアの可愛さを相乗効果で跳ね上げているのだ。
私の家は無宗教なのだが、神を信仰する気持ちというものがなんとなくわかった気がした。
『ふふっ、確かに私は女神ですが――ただのサポートNPCでもあります。いままで通りに接していただけると、嬉しいです』
そう言いながら、リリアはスラリアから手を離した。
ぷよんと跳ねたスラリアが、私の胸に飛び込んでくる。
「リリアが、そう言うなら……」
「ぷにゅんにゅ」
私の返事を聞いて、嬉しそうに微笑むリリア。
ぁう……笑顔、まっすぐ見ちゃった。
スラリアをぎゅっと抱きしめることでドキドキするのを抑えようとするけど、余計に鼓動の大きさを意識してしまう結果になった。
『では、チュートリアルクリアの特典として、いくつか渡すものがございます』
さらに、リリアは、とことこと私の前に歩み寄ってくるのだ。
『じゃーん、まずはアイテムポーチです! 見た目よりも収容能力が抜群なので、手に入れたアイテムは全て、ここに入れちゃってください』
シンプルなデザインが可愛いウエストポーチを、私の腰に手を回して着けてくれる。
筆箱とスマホを入れたらいっぱいになっちゃいそうな大きさだけど。
まあ、ゲームっぽいといえばゲームっぽいね。
『次に、これはリリア様が獲得した銀狼の牙の報奨金1,000リラです』
神殿かな? そんな風な綺麗な建物が描かれた銀貨を10枚もらった。
“リラ”というのはお金の単位ね、きっと。
『最後に……えいっ』
リリアがかけ声とともに私を指すと、私の服装がパッと替わった。
上半身は……スラリアが邪魔でよく見えない。
ちょっとどいて、ぺいっとその辺に放り投げる。
裾がふわふわした白い長袖シャツに革の茶色い手袋、そして下半身は黒いショートパンツに手袋と同じ色の編み込みブーツ。
『ふふっ、初級冒険者向けの装備ですが、なかなか可愛いと思いませんか?』
「うんっ……! いいねっ、これ」
その場でくるくると回りながら、可愛い装備を見下ろして楽しむ。
隣でスラリアも同じようにくるくるしているけど、あなた、なにも着ていないでしょ?
『装備による防御性能の向上はステータスに反映はされませんが、強い装備を着けていると、もちろんダメージを受けづらくなりますよ』
「うん、わかったっ」
「ぷにゅにゅっ」
『今回の開始フェイズは、これで以上になります。あっ、ちなみに、開始フェイズをスキップしたとしても、なにかがもらえなくなるということはありません。早く冒険をスタートしたいときは、遠慮なくスキップしてくださいね』
リリアに会えなくなる選択肢を取るなんて、考えられない。
私が無言で首を振ると、リリアは困ったように微笑んだ。可愛い。
『なにか、ご質問はありますか?』
「えっと……」
昨日、弟の
すると、女神リリアは、このゲームのメインマスコットのひとりらしいのだ。
見せてもらった公式サイトのトップページでは、確かにリリアが笑顔で案内をしていた。
だから、いまの私の姿は、おそらくとにかく目立って仕方がない。
見た目を変更することができるかどうか、聞いてみようと思っていたのだけれど。
『どうかなさいましたか?』
私が押し黙っていることに、リリアは首を傾げる。
うん、無理だな。
本人に向かって、見た目が恥ずかしいから変えてなんて言えないし。
「ううん。ごめんごめん、なんでもないよ」
「ぷにゅにゅー」
手を振って、リリアに謝る。
足もとで、なぜかスラリアもリリアにぷにっていた。
『そうですか? わかりました。リリア様、いわゆるはじまりの街は複数存在しているのですが、どなたかお友達と待ち合わせなどしておりますか?』
「ううん」
「ぷにゅにゅ」
『ふふっ、では、ランダムにお送りいたしますね』
リリアの言葉が終わるやいなや、私は、例のふわっとする感覚を味わっていた。
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【名前】リリア
【レベル】3
【ジョブ】テイマー
【使用武器】スライム:習熟度2
【ステータス】
物理攻撃:5 物理防御:25
魔力:20 敏捷:5 幸運:15
【スキル】スライム強化、なつき度強化
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