はじまりの森を探索します
話を聞くに、この困っている男の人は、森に生えているお茶っ葉を集める仕事をしているらしい。
私が――というかほとんどスライムが――飲んだお茶も、その茶葉から淹れたものだったみたい。
しかし、最近になって森に強い魔物が棲みついてしまい、その仕事に支障が出てきた。
「それで、なんとかしてほしい、ということね」
「ぷににゅ」
男の人から話を聞き終わって、ログハウスを辞した私とスライムは、森の奥に向かおうとする。
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【スキル】なつき度強化を取得しました!
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「ひゃっ!」
突然に目の前に黒い画面が現れて、飛び跳ねるぐらいに驚かされる。
抱えたスライムも、ぷよんと跳ねた。
「えっと、なにこれ? なつき度強化?」
そういえば、これはゲームなのだった。
宙に浮かぶ画面を消そうと思って、それに指を当てる。
すると、黒い画面がうにょんと下に伸びた。
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【スキル】なつき度強化を取得しました!
隠れステータス、魔物のなつき度の上昇値が
小程度だけ増加します。
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なるほど、スキルの詳しい説明を見ることができたのか。
「あなたにお茶をあげたのが、よかったのかな?」
「ぷにゅ?」
スライムに聞いてみたが、やはり明確な答えは返ってこない。
まあ、意思疎通が難しいのはわかってたことだけど。
よく見たら、黒い画面の右上にバツ印があって、それを押すと画面が消えた。
「よし、行こうか。たぶん、向こう……?」
木々の密集がなくて、奥に続く道のようになっているところがある。
「ぷにぷにっ!」
「ふふ、わかったわかった。行こうね」
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ピクニック気分で、のんびりと歩く。
木々の間から差し込む陽の光が、ちょうどよく暖かいのだ。
すると、なんの前触れもなく、道の横の茂みからにゅるんとスライムが現れた。
「うわっ、可愛いっ」
「ぷにゅぷにっ!」
仲間に会えて嬉しいのだろうか、私の腕の中でスライムが揺れまくる。
「ほら、お仲間だよー」
私はスライムを掲げながら、茂みから出てきたスライム――ややこしいから、野良スライムと呼ぶことにしよう――に近づいていった。
野良スライムは、少し濃い青色みたい。
「ぷににゅ!」
「ちょっと、どうしたの――ぐふぅっ!」
暴れ出したスライムに気を取られていると、私の下腹部を衝撃が襲った。
色気のない悲鳴を上げながら後ろに倒れて、
「いてて……」
思わずつぶやいたけど、落ち着いてみるとそこまで痛くはなかった。
もし現実だったら、痣が残るぐらいの衝撃だったのではないだろうか。
でも、ゲームだから痛みを抑えるような調整がされているのかもしれない。
「というか、いったいなにが……」
身体を起こすと、スライムと野良スライムが向かい合って、お互いにぷるぷると揺れていた。
なんかの儀式? 感動の再会?
いや、違う。
私のスライムが、野良スライムめがけて、びゅんと跳ぶ。
ぷにぷに同士の衝突のわりには、鈍い音が辺りに響いた。
「ぷにゅっぷ!」
「ぷにぃ……」
勝ちどき――そんな風に見えた――を上げる私のスライムの前で、野良スライムが淡い光になって消えていく。
そうか……そこら辺にいる魔物は敵なのね。
私は、野良スライムの突進をくらったのか。
無防備に敵に近づくなんて浅はかすぎたな、私は。
「ぷにににっ」
地面に座り込む私の周りを、スライムが跳ね回る。
うーむ、心配しているのか、それとも。
「褒めてほしいの?」
「ぷにゅっ」
私が手を伸ばすと、スライムはぷにぷにとすり寄ってきた。可愛い。
「私の代わりに倒してくれたのかー? 偉いぞー、スライム」
「にゅにゅっ!」
ふと、この子に名前をつけようと思った。
ゲームのシステムとして名付けができるのかはわからないけれど、いつまでも個体名では可愛そうかもしれないし。
「うーん、スラ
「……ぷに?」
「違うか、スラ丸」
「ぷにぷにっ」
私の顎に、スライムががんがんぶにぶにとぶつかってくる。
気に入らなかったのかもしれない。
「あっ、もしかして、女の子かな? スラ美は?」
「ぷにぷにっ」
「えっ、違うのかな……?」
もしかして性別とかではなくて、私のネーミングセンスに怒っている?
そうだったら、なんだか申し訳ないな。
「えっと……じゃあ、スラリア」
「ぷにゅっ? ぷにぷにゅぅ」
おー、お気に召したようだ。
私の膝の上に、ぷぷにっと上ってきて嬉しそうに揺れている。
「ふふっ、スラリアか。あらためて、これからよろしくね」
「ぷにゅっ」
ピクニックどころではなかった魔物の森で、私とスラリアは固く握手――私の手はスラリアの中にめり込んでいたけど――を交わした。
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【名前】リリア
【レベル】1
【ジョブ】テイマー
【使用武器】スライム:習熟度1
【ステータス】
物理攻撃:5 物理防御:20
魔力:15 敏捷:5 幸運:5
【スキル】スライム強化、なつき度強化
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