【テイルズ・オンライン】~スライムをパートナーに、ゲーム初心者が不人気ジョブ『テイマー』で成り上がる~
あおば
First Tales:不人気テイマーとスライムで成り上がります
Prologue
リリア様、爆誕します
真っ白の空間に、私と、可愛い金髪美少女が向かい合っていた。
ここは、テイルズ・オンラインの世界。
新作のVRMMO? というゲームで、抽選に当たらないと買えないぐらいの人気作品らしい。
本当は、私の弟がお父さんとお母さんに内緒で申し込んでいたのだけれど、当選した後でバレてしまった。
ちゃんと普段から勉強していれば、取り上げられることもなかったと思うのに。
まあ、遊んでばっかりのゲームバカのあいつには、いい薬だろう。
しかし、返品させられて終わりかと思ったら、じゃあせめて姉ちゃんが遊んでくれ学校のやつらに当たったこと自慢しちゃったんだよ、と弟に泣きつかれたのだ。
大学への進学がすでに決まっていて、それなりに暇ではあった。
そんなわけで、いま私は、まさにゲームの世界に降り立っている。
「すごい……これが、ゲーム?」
思わず呟いてから、両手をにぎにぎと動かしたり、自分の身体を見下ろしたりしてみる。
その感覚に、現実との違いは感じない。
強いて言えば、なんだか可愛いワンピースを着させられているところが違和感だろうか。
普段の私はお洒落に無頓着で、学校の制服以外にスカートを履いたりしないからだ。
『ふふっ、どうですか?』
私が感心していると、目の前の美少女が話しかけてきた。
あれ? ゲームのキャラクターじゃないのかな?
「えっと……まるで現実みたいで、すごい、ですね」
『あら、敬語なんて止めてください。私は、サポートNPCのリリアと申します。以後お見知りおきを』
「NPC?」
『ノンプレイヤーキャラクターの略称で、プレイヤーが操作していないキャラクターのことです』
「えっ? 本当に?」
私は美少女に近づいて、その精巧な容貌、特に表情をまじまじと眺めてみる。
ゲームが作っているとは、なかなか思えない。
うわっ、なんだか良い匂いがした。
まさか嗅覚まで現実のようだ。
「最近のゲームってのは、すごいのね……」
『あの、そんなに見つめられると、恥ずかしいです……』
少し頬を赤らめて、リリアは俯く。
これがプログラムで動いていると言って、誰が信じるのだろうか。
とりあえず私はまだ信じられていない。
「ごめんごめん。私ね、ぜんぜんゲームなんてやったことないから驚いちゃって」
『そ、そうなのですね。もしよろしければ、キャラクター作成をサポートいたしましょうか?』
俯いていたリリアが、おずおずと申し出てきた。
なにもわからないに等しい状態だったから、助かる。
「うん、お願いしようかな」
かしこまりました、とリリアが微笑むと、私の目の前に黒い画面がパッと出てきた。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【名前】
【レベル】1
【ジョブ】
【使用武器】
【ステータス】
物理攻撃: 物理防御:
魔力: 敏捷: 幸運:
【スキル】
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
おー、なんだかいろいろな項目があるようだ。
よくわからないけど、ゲームっぽい。
『お名前は、いかがなさいますか?』
「えーと、あんまり現実と同じ名前にしない方がいいんだよね?」
ネットリテラシーの授業で、そんな話をされた覚えがある。
『そうですね。この後、見た目のエディットを行うのですが、現実の外見から変えすぎることができません。個人の特定に繋がらないように、名前を設定することをおすすめします』
「うーん、じゃあ、リリアで」
『えっ? あっ、かしこまりました』
「ごめん、ややこしくなっちゃったかな?」
NPCだとはいえ、慌てさせてしまったようなので、つい謝ってしまう。
顔を赤くしている目の前の少女リリアが見た目も名前も可愛かったから、あやかってみたのだけれど。
『いえっ、どんなお名前でも、問題はありません。えっちなものでなければ……』
後半のセリフを小さな声でつぶやきながら、リリアは黒い画面をなにやら操作する。
『次に、見た目をエディットします』
リリアがそう言うと、私の前に鏡のようなものが現れた。
そこに映っているのは、現実世界の私だ。
うーん……こう改めて目の当たりにすると、ちんちくりんだな。
もう少し、身長とか胸とか胸とか、欲しかったかな。
『もちろん安全なのですが、このゲームは脳に作用しております。そのため、先ほどお伝えしたように、現実の身体感覚から外れないぐらいの変化しか行えません』
「えっ、じゃあ背を伸ばしたりとかは?」
あと、ほんのちょっとだけ貧相な胸を大きくするとか。
『数センチ程度でしたら可能ですが、身体を操作しづらくなるのでおすすめはしません』
リリアは、私の問いに申し訳なさそうに答えた。
うぅ……そうなのか、儚い夢だったな。
「それなら……リリアに近づけられるところは?」
『私に、ですか?』
目を丸くしている姿は、愛らしいという感想しか抱けない。
「うん、できるところだけでいいから」
『……こんな感じで、いかがでしょうか?』
リリアの言葉が終わったとき、鏡には金髪美少女が映っていた。
さらさらしっとりとした色合いの金髪は、さらっと腰まで流れていて。
落ち着いた雰囲気の碧眼は、穏やかに私自身を見つめている。
まさに深窓のご令嬢、って感じかな。
確かに、現実世界の面影が残っているけれど、ほとんど別人だ。
「なにこれ、可愛いっ……!」
『では、これでよろしいですか?』
「うんっ、ありがとう」
私がお礼を言うと、私と同じ外見をしたリリアは、恥ずかしそうに俯いた。
いや、リリアに私が似ているんだった。
ややこしくなっちゃったから、NPCのリリアの方は本家リリアなんていう風に呼ぼうかな、なんてね。
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