Scene02 無理心中と幼い子ども

第10話 たこ焼き

そして、事件の進展もなく数日が過ぎた。


――休憩室


「大輔。

 たこ焼き作りに行くぞ」


そういったのは、村雨 小太郎。

大輔の幼馴染だ。


「たこ焼き?」


突然の言葉に大将は驚く。


「ああ、将門さんに許可は得ている。

 これも生活安全課の仕事さ」


「え?」


「あー。今、『自分は、特殊班なのになんで?』って思ったでしょ?」


りのあが突然現れそういった。


「えっと……」


大輔は言葉に詰まる。


「えっと?」


「この間の事件もあるのにたこ焼きを作っている場合かな?と思って……」


「それはそれこれはこれ。

 ひとつの事件を解決できなくても他の仕事はいっぱいあるのよ」


りのあが笑った。


「そっか」


「ってことでたこ焼き作りに行くよ」


りのあが大輔の手をぎゅっと握りしめた。


「え?」


その行動に大輔の胸がきゅっと引き締められる。


「ってことでゴーゴースキップだ!」


そして大輔はりのあに引っ張られ……

ひらかた中央病院に連れてこられた。


「ここは?」


大輔はりのあの方を見る。


「病院」


「それはわかるけど」


そこには数人の制服を着た警察官と看護師がいた。

そして中心に中年の男がそこにいた。


「あの人は?」


大輔が尋ねる。


「お?君は例の??」


すると中年の男が優しく微笑んだ。


「あ、久留里 大輔といいます」


「私は、山本昭三だよ。

 元生活安全課の元刑事さ」


「そ、そうですか」


大輔はこういう自己紹介が苦手だった。

そもそもこういう自己紹介が得意だったら面接のひとつやふたつ受かっているだろう。


「じゃ、たこ焼きを作ろうか」


昭三がそういう目を輝かせた子どもたちが駆け寄ってくる。


「って?あれ?歩ちゃんたち?」


「おっす!兄ちゃん!たこ焼き食いに来たぜ!」


元太がそういって笑う。


「そっか……」


平穏な日常がはじまると思っていた。

だが大輔に平穏は訪れない。

事件はこの日の夜に起きた。

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