第6話 不審者発見

ダメだと思っている。

でも、見たい。

悶々とした気持ちの中……

大輔は捜査をはじめた。


「みんな!最近このへんで変な人見なかった?」


りのあが、そう尋ねると子どもたちが元気いっぱいで答える。


「みた!!」


「え?どこで?」


「その人たち、スカートを履いているのにジャングルジムに乗っているんだー」


女の子がそういった。

この女の子の名前は、石田 歩。


「そうそう!可愛い顔しているのにパンツ丸見えでやんの!」


ゲラゲラ笑いながら小島 元太がいった。


そしてクールな男の子、允彦がため息まじりにいった。


「元太くん、ちょっと下品ですよ?

 今は、下着が見えたとかどうでもいいじゃないですか」


するとりのあがすぐに答える。


「うん、私たちが追っているのは男の人なんだ」


「あ、そう言えばいつもその女の人たちの近くにいる人って男の人いたよね」


歩がそういうと允彦が答える。


「はい、いつもカメラを構えている人……いますよね。

 盗撮じゃなさそうなのですが」


「どうして盗撮じゃないと思うの?」


「女の人、嫌がっているんですけど抵抗しないんです」


「うーん。

 盗撮じゃないにしても犯罪臭するよね。

 とりあえずその件に関しては生活安全課に連絡をいれとかないと」


生活安全課。

そこには大輔のかつての友人がいる部署だ。

村雨 小太郎。

彼は小さい頃から警察に憧れており人一倍正義感が強かった。

最近は、連絡をとっていない。

というのも大輔はニートだということを引け目に感じ友人たちと連絡を取るのを拒んでいた。


りのあは、そんな大輔の気持ちなど知らないままスマートフォンを取り出し連絡を入れた。


「あ、村雨くん?

 ちと相談があるんだけど……」


大輔の嫌な予感が的中した。

小太郎が来る。

それは、少し不安な気持ちがあった。

避けていた相手と会う。

それほど不安なことはないだろう。

そう思っていた。


小太郎は、すぐに公園にやって来る。

そして、大輔の顔を持た途端ため息を吐いた。


「大輔。

 お前……」


罵声を浴びせられる。

そんな予感が走る。

大輔は目を閉じる。


「ニートになっているって聞いたが盗撮犯になったのか?」


違った意味で大輔は傷ついた。


「違う違う。

 この人は、一応新米警察だよ。

 ほら、この間のニートなんとか改正法案での……」


りのあがそこまでいうと小太郎が笑う。


「ああ、ニート撲滅委員会が強引に可決したあれかー」


「怒らないの?」


「うん?」


大輔がひねってひねってひねってでた言葉がそれだった。


「なんで怒るんだ?」


「だって警察になるのって苦労するんでしょ?

 なのに簡単に警察になってしまった僕が憎くない?」


「それは多少思うことはある。

 だが、メール無視の方が俺の心の傷は深い。

 太郎も御幸も萌ちゃんも心配してたんだぞ」


小十郎がそういって苦笑いを浮かべる。


「……ごめん」


「初給料で焼き肉奢れよ?」


「う、うん」


小十郎と大輔が再びであった。


「知り合いだったんだ?

 まぁ、いいけどさー

 焼き肉私も食べたい」


りのあがそういうと子どもたちも「食べたい」という。


「えー」


大輔が不満げにそういうとりのあがいう。


「まあさ、お肉を焼いてあげるから奢ってもいいじゃん」


「焼くだけじゃん」


「お肉を焼きまくるいわば肉奴隷だよ?

 私を肉奴隷にしてみない?」


「……意味わかっていっているでしょ?」


大輔がそういうと小太郎が笑う。


「ははは、なんだお前ら仲良しだな」


「え?」


大輔の心が小さく揺らぐ。

自分の中にいるなにかが語りかける。


 バケモノは、女と仲良くしてはいけない。


心の中に響くそれは大輔の心を深くえぐった。

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