孤児ツェランの成り上がり
本坊ゆう
第1話 ギフテッド
神から与えられた特別なスキルを
人は3度、
5歳の時は、
10歳の時は、0.1%、15歳の時は0.01%である。つまり圧倒的多数の人々、98.89%の人々は、何の
もっとも、
しかしどんなつまらない
ギフテッドに親切にすれば、それはすなわち神の御心に適うことと考えられているからである。
しかし必ずしも世の中は心の正しい者ばかりではない。真に有用なギフテッドの場合は、その者を利用せんとして蠢く者も多くなる。素晴らしい
5歳の時の選別の際に神の御心に適い、ギフテッドとなり、更に10歳の時にも何らかの
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ツェランは母親を知らない。ツェランも人間であるから、母がいたはずだが、ツェランを産んで直ぐに死んだと言う。母乳を与えることもなく、死んだので、ツェランは山羊の乳で育てられた。
その乳を提供してくれた山羊も、ツェランが3歳の時の冬を乗り越えるために、絞められた。
ツェランの父は名をドンルと言う。木こりと言うか、薪拾いを生業にしていた。町からやや離れた山奥、然したる魔物も出ない辺りに賤ヶ家を編んで、薪を拾っては乾燥させて、それを麓の町に売りに行くことで自分とツェランを食わせていた。
何が原因で死んだのかははっきりとは分からない。
おそらくは、酒でも飲んだのであろう。おのが小屋にたどり着く前に、冬の屋外で眠ってしまい、おそらくはそのまま凍死した。
朝になって、ツェランが見つけて、穴を掘り、ツェランが家の隣に埋葬した。
ちょうどその日はツェランの5歳の誕生日だった。いちいち自分が何歳だと数えている庶民は滅多にいないのだが、世界の方は数え漏れは無いようであり、その日、ツェランはギフテッドになり、自分の
翌日、ツェランは薪を町に運び、父のドンルが卸していた商人のゴレフスのもとに運び、父が死んだので、これからは自分が薪を持ってくると告げた。
ゴレフスは、そうか、と言っただけであり、代金の銀貨8枚(8万エキュ)を支払った。ゴレフスは、当然ながらツェランが孤児になったことを知ったわけだが、別にどうともしなかった。町の子が孤児になれば孤児院に入れられるが、ツェランは町の子ではない。後は生きるか死ぬかは当人の運次第である。
ツェランは翌日も薪を運んできた。薪を念入りに調べて、問題なしと判断したゴレフスは、やはり銀貨8枚を支払った。
次の日もツェランが薪を持ってきた時には、ゴレフスもさすがにおかしいと勘づいた。
「おまえ、なにか
ゴレフスがそう言うと、ツェランが緊張したのが分かった。
ツェランは、ドンルから、もし何か
「ああ、言わんでいい。お
俺はドンルが残した薪をおまえが持ってきたのかと思っていたが、3日続けてだ。もう薪はなかろうが、こうしておまえは持ってきた。つまりこれはおまえがこしらえた薪だ。にもかかわらずきちんと乾かしてある。
多分な、おまえ薪づくりの
「お
ツェランは言った。
「ああ、それは分かってる。だがひと月に銀貨8枚あれば十分暮らしていけるはずだぞ。おまえはドンルの後を継いで薪売りをやればいい」
「俺、山に1人だけ。1人だけは嫌だ」
そう聞いて、ゴレフスはしばらく、黙ってツェランを見たまま、何も言わなかった。
「そうか、じゃあ、おまえ、店番やるか」
「やる」
そうやって、ツェランはゴレフスのもとで店番をやるようになった。雇われているわけではない。ただ、ツェランがいる時は、ゴレフスは食事を作ってやったり、手が空いている時は読み書きや計算を教えてやるようになった。
ツェランが授かった
これは植物・微生物を除く生体と、大地から切り離されていない融合している大地の一部、それら以外は、容量を問わずに異次元に収納できると言う、極めて希少かつ有用な
収納系の
それだけでも凄いのだが、ツェランの
まず、目視で収納の出し入れが可能だと言うことだ。
通常は収納系の
目視で出し入れが可能と言うことは、触れないものも収納できると言うことだ。具体的には雲や水蒸気などの気体や、危険で触れないマグマなども、目に見えれば収納できると言うことだ。更に目視できる範囲で随意で収納物を出現させられるのであれば、ツェランは戦闘力は非力であっても、巨大な岩を魔物の頭上に出現させれば自動的に大抵の魔物は潰されて死ぬので、安全に距離をとって魔物を斃せると言うことでもある。
おそらくは目視での収納が可能と言うのは、ツェランの
自動解体機能は、収納系の
冒険者ギルドや屠畜場では、容量が小さめの収納系
収納された物品は、セルごとに区分されて保管されるのだが、ツェランの
通常は、気温20度程度、湿度50度程度、陽光と大気は有り、時間停止状態がデフォルトになっていて、いじれないようになっていることが多い。ツェランの無限収納はそれらがすべていじれるようになっていた。
これはどういうことかと言えば、ツェランは無限収納の中で、料理を行うことも可能であるし、農業も出来ると言うことなのだ。
例えば鉢植えの中にジャガイモを埋めて、合間合間で取り出して水をやりながら、セル内の時間速度を進めれば、数分かからず生長させて収穫できる、ジャガイモどころか樹木ですらこれが可能なのだ。
それどころか、海を知らないツェランは思いついてはいないのだが、海産物の養殖すら可能だろう。
ツェランは、生木を目視で収納し、自動解体で適当な大きさに切断して、セル環境設定で乾燥状態にして、時間を一気に進めることでほぼ一瞬で薪を量産していたのだった。
この
山できのこなどを拾っては、ゴレフスのところに土産として運ぶことだけで満足していた。
結果的にはゴレフスは、ツェランには第2の父とでも言うような存在になり、文字の読み書きや計算(これが出来るだけでもエリューシオン王国では上位5%以内に入る知識人である)、社会常識、彼は意外と物識りだったので、持てる知識を雑談と言う形でツェランに伝え、ツェランが10歳になる頃、流行病で突如として死んだ。
ゴレフスの店と、商人としての登録株、その町ニエンニムの市民権、わずかばかりの財産は遺産としてツェランに遺されたのだった。
5歳の時に父を失い、
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