縮小転移星人ちゃん

潰れたトマト

縮小転移星人ちゃん

清々しい朝。丸いフォルムをしたドームのような家の窓に日の光が降り注ぐ。


「うぅ………。」


 ベッドの中で気だるそうに唸るひとりの少女。

 眉をひそめて布団に籠ってしまう。どうやら朝に弱いようだ。


 そんな少女の耳元へ近付いていく小さな影。こびとだ。1センチ程の小さなこびとが布団に籠る少女の耳元に向かって走っていく。

 布団の隙間に入っていったこびとは大声を出して彼女を起こそうとしている。

 目覚まし時計の代わりのようだ。


「う~………。」


 しかし寝起きが悪いのか、なかなか起きようとしない少女。こびとは更に少女の耳元に近付き声を張り上げる。


「うー………うるさい。」


 ぺちんっ


 耳元で叫び続けるこびとにイラッときた少女は、手をデコピンの形に変えこびとを中指でピンっと弾いた。

 自分よりも遥かに大きな肉の塊が超高速でぶつかってきたこびとは弧を描くように飛んでいき固い床へと叩きつけられた。


「う~ん……朝……?」


 少女はむくりと起き上がり腕を伸ばして背伸びをする。まだ眠たそうな表情をしているが起きる気にはなったようだ。

 のそっとベッドから立ち上がりトイレに向かう。

 その途中で先程飛んでいったこびとを踏んづけてしまっていたが、彼女に気にする様子はみられなかった。


 トイレに着いた少女は下衣を下げ洋式型の便座に座って用を足し始める。


「ん……。」


 じょろろろろろろろろろろ………じょろ……ちょろ………


「ふぅ……。」


 用を済ませた少女は中腰になると目を瞑り何かを念じ始めた。

 すると突然便座の上に小さな影がいくつも現れた。

 今度は5ミリもないこびとたちだ。

 彼らは今の状況が理解できずに便座の上で右往左往していた。


「拭いて……。」


 上空からの耳をつんざくような声に驚いたこびとたちは天を見上げた。

 そこにはまだ幼いであろう少女の臀部が巨大な姿となって上空を埋め尽くしていた。

 大巨人の残尿が垂れている陰部を見てパニックに陥るこびとたち。


 面倒に思った少女はこびとたちの様子も見ずに腰を下ろして濡れた陰部をこびとたちに押し付けた。

 急に落下してきた巨大な陰部に押し付けられたこびとたちは強烈なアンモニア臭を放つ尿を全身に浴びてぐしょぐしょになった。また数人のこびとたちは湿った大陰唇に貼り付いてしまい囚われの身になっていた。


 こびとの身体で尿を拭き取った少女が再び目を瞑り念じると便座上にいたこびとたちの姿がパッと消え、便器内の水溜まりに瞬間移動していた。

 訳も分からず少女の出したおしっこの中で溺れていたこびとたちは急に発生した大きな渦巻きに呑まれ、水の底へと消えていった。


 ジャーーー………


 コックを回して下衣を履き直す少女。

 少女の陰部に貼り付いてたこびとたちはそのままショーツの中に閉じ込められてしまった。

 下着越しに伝わるくすぐったい感触を愉しみながら少女はトイレを出た。



 少女は不思議な能力を持つ宇宙人だった。

 通称『縮小転移星人』。

 女の子なので縮小転移星人ちゃん。

 その姿は小学生高学年位の幼い少女で、真っ白い長髪に真っ赤な目、同年代と比べて平均よりも低身長で華奢な体格をしている。

 勿論ちっぱいである。


 彼女はその名の通りありとあらゆる生き物や物体を目を瞑り念じることによって縮小・転移することができるのだ。

 縮小させるサイズは勿論、転移する場所も自由に選ぶことができる。

 肉眼では見えない程まで縮めることができるし、転移先も自分の体内や遠く離れた場所に送ることも可能で、とても融通性が効く能力なのだ。

 ただし目を瞑って念じることが発動条件であり、開眼状態や集中できない状況下では使用できないのが欠点である。

 彼女は他にも瞬間移動や浮遊、両性具有化など人間では真似できないような特殊な力を持っていた。


 縮小転移星人ちゃんの日常生活は他の星から縮小転移したこびとを消費しながら暮らすのが一般的であった。


 なので歯を磨く時もこびとを歯みがき粉に付着させたままゴシゴシと磨き、口をゆすぐ時もうがいする時もこびとを口内に転移させてから行う。

 服に着替える時も足元にこびとを転移させてから始める。足元でこびとが踏み潰されたり脱ぎ捨てたパジャマに押し潰されているのを上から眺めながら普段着である白のワンピースに着替えるのだ。


 このようにして他の星から一方的に縮小転移したこびとを一日一万人程のペースで消耗する日々を過ごすのが縮小転移星人ちゃんの日常なのだ。


 ぐうぅぅぅ………


 縮小転移星人ちゃんのお腹が鳴る。お腹が空いたようだ。

 早速目を瞑り念じながら食事の挨拶を済ます。


「……いただきます……。」


 目を開けると口の中いっぱいにこびとたちが縮小転移されていた。

 こびとたちは突然光のない湿った場所に転移され全員が混乱していた。

 空間全体に生物的な音が反響し、床もぬるぬると蠢いている。

 口内の人々のことなど意に介せずそのままごくりとひと呑みにする縮小転移星人ちゃん。

 こびとたちは状況を理解できないまま胃袋へと落ちていった。


 呑み終わるとまたすぐに念じ始める縮小転移星人ちゃん。

 また口内にこびとたちを転移させると今度は容赦なく噛み潰していく。

 人々は転移された瞬間に噛み潰されていった為、恐怖に駆られる暇もなく速やかにミンチへと変えられていった。


 縮小転移星人ちゃんの食事はいつもパターンが限られており、後はせいぜい直接胃に送るか掌に乗せてから少しずつ舐めとる位のものだった。

 こうして多くの人命を自らの血肉として食事を楽しんでいった。


「……ごちそうさま……。」


 食事を終えた縮小転移星人ちゃんはカレンダーを見て今日の予定をチェックした。

 縮小転移星人ちゃんは基本的には何不自由なく生活しているが、一週間に一度の頻度で未知の銀河や星を探しに出掛けるのだ。

 理由はただひとつ。

 質の良い知的生命体を見つけるためだ。


 縮小転移したこびとにも色々と種類がある。

 味が良い者とまずい者、玩具として使える者と使えない者、知性が高い者と低い者……と、数え上げるとキリがない。

 できればなるべく総合的に良条件を満たしているこびとを使いたいのだ。


 その為には直接この目で確かめるしかない。

 美味しい肉体をしているのか。

 愛玩道具として使えるだけの体力を持っているのか。

 命令に従える程の知能はあるのか。


 これらの条件を高い水準で保っている知的生命体が存在する星を求めて、今日も縮小転移星人ちゃんは宇宙を駆けるのだ。



 ※



 家を出て適当に瞬間移動を繰り返す縮小転移星人ちゃん。

 近場の星や銀河は全て消費してしまったので、今回は少し遠い銀河を散策してみる。

 キョロキョロと辺りを見回すと、何やら知的生命体が住んでいそうな星を見つけた。


「……ここはどうかな……?」


 期待に胸を躍らせながら縮小転移星人ちゃんは目的の星へと浮遊していった。


 大気圏を生身で傷ひとつ付けることなく降下した縮小転移星人ちゃん。

 その眼下には超高層ビルが地表にびっしりと並び、宙には巨大な要塞がいくつも浮いている高度な文明が広がっていた。

 どうやら知能はかなり高い生命体のようだ。

 辺りを眺めていると、突如警報が鳴り響き、目前の空中要塞から無数の戦闘機らしきものが出てきた。

 宇宙から生身で侵入してきた縮小転移星人ちゃんを驚異として判断したようだ。周囲を包囲する戦闘機。大きさは縮小転移星人ちゃんの数倍はありそうだ。操縦席には知的生命体が搭乗しており、身体のサイズは縮小転移星人ちゃんと大差ないようだ。


「未確認飛行物体に告ぐ!これ以上の接近は侵略行為と見なし、一斉に攻撃を開始する!繰り返す!」


 敵意を露にして警告を続ける軍隊。

 母星を守ろうと必死だ。



 しかし、縮小転移星人ちゃんにはそんなことは全くの無意味だった。

 ゆっくりと目を瞑り念じる縮小転移星人ちゃん。


 次の瞬間、包囲していた戦闘機がひとつ残らず地表へと落下していった。

 街の住民は上空から自由落下してきた戦闘機の雨に見舞われ次々と死んでいった。


 戦闘機のパイロットたちは唖然とした。今の今まで戦闘機に乗り驚異と対峙していたのに、気付くと全員が素っ裸で肌色のデコボコとした大地に集合していた。

 パイロットたちは全員パニック状態だった。


「……いただきます……。」


 突然上空から爆音が轟きパイロットたちは耳をふさいだ。

 その直後肌色の大地が上昇し強力なGがパイロットたちを襲う。

 必死に重力に耐えるパイロットたちが最期に見た光景は、暗闇が支配する巨大な肉でできた空間にビルのような白い物体が立ち並ぶ生きたブラックホールだった。


 ぱくっ


 掌に乗せたこの星の知的生命体を口に入れる縮小転移星人ちゃん。

 目を瞑りながら味を確かめるようにもごもごと舌を動かす。


「……んー……。」


 肥えた舌が即座に判断する。

 これは………ない………。


 思いの外味がしょっぱい上にちょっと臭みがある。いくら知能が高くても、美味しくないなら意味がない。

 うん。ここの生命体はダメだ。


「……ごちそうさま……。」


 ごっくん………


 とりあえず口内のこびとたちを呑み干す。一度口にしたものは最後まで食べ切るのが縮小転移星人ちゃんのこだわりなのだ。


 この星の生命体は玩具としてのみ使うことにしよう。

 そう思った縮小転移星人ちゃんはフッとその場から消えた。瞬間移動で次の星を探しに行ったのだ。


 急に消えてしまった侵略者に驚きを隠せない住民たち。

 落下した戦闘機の残骸には何故かパイロットのものと思わしき軍服だけが残されていた。



 ※



 「……あ……。」


 不味い惑星から去って30分後、早くも知的生命体が住んでいそうな星を発見した。

 キラキラと発光しながら宇宙空間に明かりを灯している。

 ここもかなり高度な文明を築いていそうだ。

 次こそはと期待を新たに星へ向かう縮小転移星人ちゃんであった。



「…………………………。」


 予想は当たっていた。

 先程の文明を遥かに凌ぐ先進的な惑星。どうやって構成されているのかさっぱり分からない不思議な形の建造物。

 街並みの上に浮かぶ用途不明の丸い球体の数々。

 海が切り取られたように浮きながら様々な形に変化する謎の光景。


 数多の星を見てきた縮小転移星人ちゃんでさえ、これ程の最新鋭の文明は一度も見たことがなかった。


 確かに予想は的中した。

 したのだが………。


「……なにこれ……。」


 つんつん………


 ぷち………


 人差し指でつつくだけで土と化す大陸。


 この星の3割の人口が土へと還っていった。


「……えぇ……。」


 ドン引きする縮小転移星人ちゃんの目の前には3センチ程の光る球体がぷかぷかと浮かんでいた。


 そう、この星は縮小転移星人ちゃんにとってはあまりにも小さ過ぎたのだ。


 自由自在に万物を縮小転移できる彼女だが、生物や無機物を巨大化させる能力は持ち合わせていなかった。

 小さくできても大きくはできないのだ。

 この星の知的生命体はあり得ない程に小さい。肉眼どころか顕微鏡でも見えないのではないだろうか………?

 これでは小さ過ぎて食用にも玩具にもならない。

 使ったところで秒で使い切ってしまう。

 全く役に立たない。


「……………。」


 期待値が高かっただけに少しムッとする縮小転移星人ちゃん。


 少し後退した後、憂さ晴らしに目の前で浮かぶその球体を思い切り蹴り飛ばした。

 縮小転移星人ちゃんの裸足は球体よりも遥かに大きく、その巨大なつま先による圧倒的な衝撃によってバラバラに砕け散りながら宇宙の果てへと飛んでいってしまった。

 おそらく生存者はひとりもいないだろう。


「……はぁ……。」


 がっくりと肩を落としてため息をつく縮小転移星人ちゃん。

 これ以上心を傷付けない為に期待値のハードルをぐんと下げて、また星探しの旅に出たのだった。



 ※



 あれから数時間ずっと瞬間移動を繰り返しながら知的生命体の住む星を探す縮小転移星人ちゃん。

 知性のない生物がいる星や人口が僅かしかない星は数あれど、なかなか目的の星は見つからなかった。


「……今日はもういいかな……。」


 テンションも下がり帰宅も視野に入れ始めたその時、遠方に青い綺麗な星が見えた。

 地表を見るにあまり文明は高くないようだが、知的生命体がたくさん生息していてもおかしくはない環境だと感じた。


「……これで最後にしよ……。」


 過度な期待を持たないよう気を付けながら本日最後の星へと向かう縮小転移星人ちゃんであった。



 縮小転移星人ちゃんが見た光景は素晴らしいものであった。

 水の惑星と言っても謙遜のない程の青く広がる海。

 人工物があちこちに点在するも草木の香りで溢れる自然豊かな緑の地形。

 人工物と自然の割合が適度な文明。


 なんとバランスの良い星なのだろうか。

 先程まで駄々下がりだったテンションが一気に上昇する。


「……ここなら……!」


 今度こそ質の良いこびとを手に入れる為、縮小転移星人ちゃんは適当に近くの地表へと瞬間移動した。



 すとん………


 地面に足を下ろす縮小転移星人ちゃん。あちこちに四角い建物が建ち並んでいる。空は薄暗く辺りには人気がなかった。

 建物の出入り口を見るにどうやら知的生命体のサイズは縮小転移星人ちゃんと同様のようだった。


 早速目を瞑り念じ始める縮小転移星人ちゃん。

 すると突然背後の路地裏から大きな手が現れ縮小転移星人ちゃんの腕を鷲掴みにしてきた。


「……………ッ!」


 この星に住む知的生命体の成体だろうか。強い力で縮小転移星人ちゃんを路地裏へ連れ去ろうとする。この成体からは性的欲求を満たそうとする下劣な煩悩と不潔で薄汚い悪印象を感じた。


 縮小転移星人ちゃんは不機嫌になった。

 せっかくレアな星を見つけたと思っていたのに、そこに住む知的生命体は綺麗な星とは真逆の身も心も汚い下等生物だったのだ。

 きっと食べても美味しくないだろう。

 しかも下等生物の分際で自分を犯そうとしている。何とも忌々しい。


 幻滅した。

 さっさとこの下等生物を縮小しておもいっきり踏み潰してから家に帰ろう。

 そう思って目を瞑ろうとした時だった。


 ピュルルルルル!ピュルルルルル!


 急に大きな音が近くで鳴り響く。

 おもわず音が鳴る方を見る。


 そこには音の発信源である機械を持ったこの星の知的生命体の幼体が立っていた。

 見た感じメスだろうか。

 年齢や背丈は縮小転移星人ちゃんと同じ位だ。

 彼女は一体何をしているのだろうか。


 すると背後で動きがあった。

 オスの成体が慌てて何処かに逃げていったのだ。


 これはもしかすると………助けられた………?


 突然の救助に驚いてその場にへたり込む。

 他人に助けられることなんて今まで一度もなかった。

 自身の能力があれば何ひとつ困ることはなかった。

 自分ひとりで何でもできた。

 だから他人を助けたことも、助けられたこともなかった。


 この体験は縮小転移星人ちゃんにとって人生で初めての出来事だったのだ。


「✕○……△、△□✕……○✕△……?」


 ぽけ~っとしているところに急に声をかけられる。


 ぼんっ!!


 顔から火が出そうになった。


 初めて感じる感情だ。

 胸がドキドキして止まらない。

 あの子の顔を見るだけで身体が緊張する。

 縮小転移星人ちゃんは自分の感情が理解できなかった。


「◎……◎✕▽◇○□✕………?」


 何かを話しているようだが言葉の意味が全く分からない。

 これでは意思疎通ができない。


 縮小転移星人ちゃんは立ち上がると照れ笑いをしてそそくさとその場から立ち去っていった。

 まずはこの感情の正体を解き明かす為、一旦出直すことにしたのだ。


 女の子はその場にひとりポツンと取り残されていた。



 ※



「……なるほど……。」


 翌日、縮小転移星人ちゃんは押し入れの奥にしまっていた古本を引っ張り出していた。

 そこには宇宙に点在する星々の情報が記されており、幅広い範囲の銀河の数々が紹介されていた。

 地図と辞典と観光情報がごっちゃになったような本だった。


 そこには運良く遠く離れた銀河の情報も掲載されており、昨日訪れた青い星『地球』のことも載っていた。

 古い書物なので幾分情報は古いが、基本的な生態系や簡単な言語はちゃんと記載されていた。


 これによると地球はオスとメスが完全に分別されており、地球人のメスは縮小転移星人ちゃんのように男性器を生やすことができないようだ。

 しかし性行為はオスとメスが揃って行う為、行為自体は可能だとのことだ。

 そして地球人のメスも性的快感を求める生き物らしい。これは縮小転移星人ちゃんと同じだ。

 これなら昨日のお礼ができる。

 顔を赤らめながら衣類を脱ぎ捨て素っ裸になる縮小転移星人ちゃん。


「……よし。お礼しに行こう……。」


 地球人の言語を脳内にコピーし、例の女の子の元へお礼参りに出掛ける縮小転移星人ちゃん。

 彼女を悦ばせたいと考えると、また胸がドキドキし始めた。


「……うぅ……これが……恋……?」


 縮小転移星人ちゃんが本を調べて分かったもうひとつの事実。


 それは自分があの女の子に『恋』、つまり恋愛感情を抱いているということだった。



 再度地球に訪れた縮小転移星人ちゃんは邪魔が入らないよう直接女の子のいる場所に瞬間移動した。


 目の前にはあの女の子がいた。

 なんと入浴中だった。

 ナイスタイミングである。


「へ……?うわぁッ!」


 こちらを見るなり浴槽の中で跳ね上がる女の子。

 瞬間移動を見るのは初めてなようだ。


「お礼……しにきた……。」


 覚えたての地球語を照れながら小声で呟く縮小転移星人ちゃん。

 女の子の裸体を見るだけでムラムラが止まらなかった。


「に、日本語喋れたんだね……!」


 会話が通じて嬉しそうな表情を見せる女の子。

 その眩しい笑顔を見て緊張のあまり声が出せない縮小転移星人ちゃん。

 このままじゃダメだ。

 今日はきちんとお礼をしに来たんだ。

 もっとちゃんとしないと。


 覚悟を決めた縮小転移星人ちゃんはおもむろに女の子が浸かる浴槽の中に脚を伸ばした。

 縮小転移星人ちゃんの行動に驚く女の子。

 当の縮小転移星人ちゃんも自分のアグレッシブさに驚きながら、勢いそのままに女の子に口づけした。


「んんんッ!!?」


 キスされたことに驚愕の反応を示す女の子。どうやら性行為には疎いようだ。

 しかしこれは絶好のチャンスだ。

 女の子には極上の快楽を感じてもらいたい。これが初めての性行為だとしたら、きっと素晴らしいプレゼントになるに違いない。


 女の子の口内に舌を入れて舌を絡ませる縮小転移星人ちゃん。目の前には女の子の綺麗な琥珀色の瞳が自分を見つめている。

 慌てて目を背ける縮小転移星人ちゃん。


(は、恥ずかしい……!)


 女の子と目が合い身体が硬直する縮小転移星人ちゃん。

 その影響で女の子の身体をぎゅっと抱き締め押し倒してしまう。

 その拍子に女の子の足がチェーンに絡まりお風呂の栓が抜けた。


 徐々に女の子の全身が露になってく。

 自分と似たような体格だ。

 胸は控えめで若干幼児体型。

 縮小転移星人ちゃんは自分の身体が大好きなので、写し鏡のような女の子の容姿はまさに理想的であった。


 ぼんっ!!


 再び顔から火が出る。

 興奮し過ぎて挙動不審になる。

 しかしもう後戻りはできない。

 前に進むしか道はない。

 女の子に昨日のお礼をする為、縮小転移星人ちゃんは女の子の首筋を優しくぺろりと舐めた。

 女の子の身体がビクッと跳ねる。

 性感帯は自分と変わらないようで少し安心する。

 その調子で鎖骨、脇、乳首、へそ、陰部と舐めていく縮小転移星人ちゃん。

 女の子のアソコからはとろとろと愛液が分泌され、女の子の目はとろんととろ

 けていた。


(これでよし……今度は……。)


 目を瞑り念じる縮小転移星人ちゃん。

 すると、縮小転移星人ちゃんの性器の前側からにょきにょきと何かが生えてくる。


 それは立派に勃起した男性器だった。

 生えて間もないのに既にガマン汁が滴り落ちていた。

 準備は万端だった。


 縮小転移星人ちゃんは女の子の目の前で自分のイチモツを指差した。

 女の子は縮小転移星人ちゃんの股から男のアレが生えているのを見てぎょっとする。

 勃起した男性器を見るのも初めてなようだ。

 ならば、怖い印象を与えてしまわないように気を付けなければ。

 縮小転移星人ちゃんは女の子に目配りをすると、彼女がなるべく痛みを感じないようにイチモツをゆっくりと膣に押し付けた。


「い………ッ!!」


「!!」


 女の子の表情が一瞬にして強ばる。

 まだ挿れるのは早かっただろうか。

 女の子の膣を覗くと微量の血が滴っていた。


(これは……処女膜……?)


 女の子は膣オナニーもしたことがないのか。なんという純白な生娘だろう。

 ………ということは、この子の初めては自分がお相手しているということ………?


(……………ッ!)


 感情が昂る。

 こんな可愛い女の子とやれるなんて。

 この子の初めてになれるなんて。

 この子と合体できるなんて。


 自分はなんて幸せ者なのだろう。


 なんとか理性を保ちながら、イチモツを女の子の奥に突きつける。

 女の子の口から女の声が洩れだす。

 女の子が自分の胸を弄りだす。

 ゆっくりとイチモツを引いてまた突き出す。

 そして少しずつスピードを早くしていく。


 爆発しそうな感情を必死に抑えながら女の子の膣に全てを託す。

 浴室に卑猥な音が鳴り響く。

 女同士で素っ裸で。

 互いに激しく腰を動かす。


(……ッ!こんなに気持ちいいの……初めて……ッ!)


 縮小転移星人ちゃんのイチモツが一段と大きくビクつく。


(出る……ッ!イクよ……ッ!)


 目を瞑りイチモツを子宮の入り口まで持っていく縮小転移星人ちゃん。


 どぴゅっ!


 どぴゅるるるっ!


 びゅるるるるる~っ!


「…………………………ッ!」


(…………………………ッ!)


 抑えていた欲望をおもいっきり放出する縮小転移星人ちゃん。


 それと同時に女の子も人生初のオーガズムを迎える。


 浴槽の中でふたりの少女が抱き締め合いながら暫しの間愛にうち震えていた。



 ※



「……………!」


 気が付くと女の子は浴槽の中で仰向けになって倒れていた。

 どうやら疲労感で疲れてしまったようだ。今にも寝そうな顔をしている。

 ……寝落ちしそうな顔もかわいい……。


 むくむくっ


「!」


 今しがた射精したばかりのイチモツがもう復活している。

 多分しようと思えばまだ続きができるだろう。

 だがそれは意に反する。

 わたしは自分の為ではなく、この子の為にコレを生やしただけなのだ。


 縮小転移星人ちゃんが目を瞑り念じると股間のイチモツは徐々にへこみ、元の恥丘に戻っていった。


 これで「お礼」は終わった。

 後は家に帰るだけだ。


「……………。」


 お礼……………?


 これは、果たしてお礼になるのか………?


 縮小転移星人ちゃんの中でお礼の定義が揺らぐ。


 自分にとってはこの上ない程幸せな時間だったが、地球人である彼女はこの行為をお礼と受け取ってくれるだろうか?


 ……何か違う気がする……。


 絶頂を迎えて幾分冷静になった縮小転移星人ちゃん。


 やっぱり違うような気がする。

 念の為にもうひとつ何かお礼ができないだろうか。

 何かこの子が喜んでくれそうなものを置いていきたい。

 しかし何がいいだろう………?

 性行為以外の地球人の好きなものなんて分からない。

 もし自分だったらどんなプレゼントが嬉しいだろう?


 …………………………!


 そうだ、何も悩むことなんてなかったんだ。


 わたしは縮小転移星人ちゃん。


 知的生命体を縮小転移し消費するのが生き甲斐の縮小転移星人ちゃんなのだ。


 わたしがこの子にプレゼントできるものなんてひとつじゃないか。


 縮小転移星人ちゃんは女の子に近付き語りかけた。


「プレゼントに縮小転移先を部屋にセッティングするから……沢山愉しんでね……。」


 そう伝えると女の子は静かに寝息をたて出した。

 やはり疲れ果てたのだろう。

 縮小転移星人ちゃんは女の子をそっと抱き抱えると、彼女の寝室へと向かっていった。



 女の子をベッドに寝かせた縮小転移星人ちゃんはすぐに縮小転移先のセッティングに取りかかった。

 目を瞑り部屋の床に両手を当てて強く念じる。

 他人の為に能力を使うのはこれが初めてだった。


「……………はぁッ!!」


 かけ声と同時に部屋の中に赤い閃光を放つ縮小転移星人ちゃん。

 光は一瞬にして消えてしまった。


「…はぁ…はぁ…これで…よし……。」


 肩で息をしながら立ち上がる。

 かなり体力を消耗したが、この子の為だと思えばなんてことはない。


「……それじゃあ……元気でね……。」


 そう言って女の子の寝顔をじっと見つめる縮小転移星人ちゃん。


 名残惜しいが仕方がない。

 いつまでもこの星にいるわけにはいかないのだ。

 それに、もしお風呂場での性行為が彼女にとって辛いことだったとしたら会わせる顔がない。


 女の子の顔を目に焼きた縮小転移星人ちゃんは、赤い目に涙を浮かべて部屋から消えていった。



 ※



 翌日、縮小転移星人ちゃんは耳元で叫ぶ目覚まし係のこびとの声を無視しながら、ベッドで仰向けになって天井を見つめていた。


 なにもやる気が出ないのだ。

 一昨日からの一連の出来事が頭から離れない。

 たった2日間の非日常が早くも恋しいのだ。

 自分はこんなに繊細だったのかと痛感する縮小転移星人ちゃん。


「……元気かな……あの子……。」


 耳元で頑張るこびとを無視してセンチメンタルに浸る縮小転移星人ちゃん。


 きっとあの子は元気でやっているだろう。

 あの子の部屋にセットした結界は、永続的に他の場所から色んなものを縮小転移させる効果を持つ。

 人や物、街、山など、地球圏内のものなら何でも縮小転移できるのだ。

 勿論消費しても即座に補充される。

 いくらでもこびとや街などで遊ぶことができるのだ。

 その上あの子に害を及ぼす輩は容赦なく縮小させる効果も合わせ持つ。

 不貞な輩が起こした出来事も全て元に戻るというおまけ付きだ。


 遊び相手に困ることはまずないだろう。

 あの子が自分からのプレゼントに喜んでくれれば幸いだ。

 あの子が幸せになっているのなら、それでいいのだ。


「……………よしッ!」


 パァンッ!!


 自分の頬を叩いて気合いを入れる縮小転移星人ちゃん。

 ずっとメソメソしているなんて自分らしくない。

 わたしは縮小転移星人ちゃん。

 他の星から知的生命体を縮小転移して好きなように消費しまくるのが生き甲斐の女の子だ。

 あの子への恩返しは済んだ。

 後はあの子の好きにしたらいい。

 あの子はあの子、わたしはわたしの人生を歩めばいいのだ。

 わたしは縮小転移星人ちゃんなのだ!


 自分に発破をかけベッドから抜け出す縮小転移星人ちゃん。その耳には赤い染みがこびりついていた。

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