最弱賢者の固有魔法【リミッター解除】で世界最強を目指す~「何もやっていない」と勇者パーティを追放されたけど、この魔法、実は最強です。追放された仲間が最強になった途端、戻って来い? もう遅い

煙雨

短編版

「なんでお前まだここにいんの?」


クエストが終わって、宴をしている時、突然勇者---シャックに言われた。


「なんでって。同じパーティメンバーなんだから一緒に居るのは当然だろ?」

「あ~。言い忘れてたわ。クロ、今日からもう来なくていいよ」

「え?」


(今、来なくていいって言わなかったか?)


「え? じゃねーって。無能のお前はいらないって言ってんの。優しく言ってやったんだから聞き返してくんじゃねーよ」

「無能って......。どこが無能なんだよ」


 すると、シャックを含めるパーティメンバー全員が大声で笑いだした。大声のあまり、ギルドに居る冒険者たちが奇妙な目でこちらを見て来ていた。


「本気で言っているのか? お前は今まで俺たちに何をしてきた? 何もしてこなかっただろ? それを普通は無能だって言うんだよ」

「みんなにバフをかけていたよ。それにモンスターだって倒して来たじゃないか......」

「何を言っているんだ? バフをかけてきた? 嘘をつくんじゃねーよ。バフなんて今まで感じた事ないぞ。それにモンスターを倒すなんて誰だってできることだ」


 シャックの言ったことに対して、パーティメンバー全員が俺を蔑む目で見てきた。


 バフを感じなかった......? そんなことあるはずがない。なんたって、シャックを含むパーティメンバー全員に固有魔法---リミッター解除をかけていたのだから。リミッター解除のおかげで、強敵であるモンスターだって倒すことができていたのに......。


「......」

「そう言うことだから、今日から来なくていいぞ。勇者パーティにお前みたいな無能が居ること事態おかしなことだったんだ」

「本当に抜けなくちゃダメか?」


 最後の希望をもってもう一度聞くと、シャックは怒鳴って俺に剣を突きつけてきた。


「お前にやる金なんてねーし、お荷物なんだよ! 無能は無能らしく俺の言うことを聞いとけばいいんだよ」

「わ、分かったよ......。今までありがとな」


 そう言ってこの場を去ろうとした時、シャックたちは俺を蔑む目で見ながら笑っていた。


(なんで、なんでだよ! 今まで一緒に冒険した仲間だったじゃないか。なのにこんな仕打ちあんまりだろ......)


 俺はそう思いながら、この場を後にした。



 勇者パーティを追放されてから何日が経っただろうか。宿屋で起きては寝るの生活を毎日繰り返していた。


「そろそろ、金が尽きてきたな。クエストを受けなくちゃだよな......」


 頭ではわかっていても、やはりシャックに追放されたことが頭によぎってしまい、クエストを受ける気力が起きなかった。


 だが、そんなことを言っていられるのも後少しだけ。お金が尽きてしまったら生きて行くことができない。だから冒険者ギルドに向かうことにした。


 ギルトに到着して、掲示板を見てどのクエストを受けようか確認する。その時、一組のパーティが俺に話しかけてきた。


「なぁ、お前一人なのか?」

「え? 俺ですか?」

「そうだよ」


 話しかけてくれる人に目を向けると、誰もが知っているパーティであった。そう、目の前にいるのは、世界でも数少ないSランクパーティ。そんな人たちがなんで俺に話しかけたんだ? 


「あ、はい。一人ですね」

「そうか。じゃあさ、俺たちの荷物持ちをしてくれないか?」

「え? 荷物持ちですか?」

「あぁ。まあ荷物持ちとは言うものの、討伐したモンスターの素材とかを持ってもらうだけだけどな。それでどうだ?」


 一瞬考えてしまった。なんせつい先日、シャックたちに追放された身。誰であろうと仲間を信じることなんて今の俺には無理であった。だが、Sランクパーティのみんなは真剣な眼差しでこちらを見て来ていたので、つい了承してしまった。


「わかりました」

「よっしゃ! じゃあ今週、ドエルフの里に行くからそこに同席するってことで頼むよ。危険な目には合わせないのは保障する」


 そう言って、Sランクパーティの皆さんはこの場を去って行った。


(本当に大丈夫なのだろうか......)



 そしてSランクパーティの皆さんと合流してエルフの里に向かう当日になった。


 みんな、シャックたちとは違って何度もコミュニケーションを取ろうとしてくれた。そして、一週間経ったところでやっとエルフの里にたどり着いた。すると一人の男性がこちらにやってきて話しかけてきた。


「ようこそエルフの里へ。長老が待っていますのでこちらへどうぞ」


 エルフの男性に言われるがまま、ついて行く。王室らしき場所に着き、今回のクエスト内容を聞く。


(王女様の護衛ね......)


 まあ俺には関係ない事だもんな。今回同席させてもらえているのは、俺の実力が買われてきているわけではない。荷物持ちとしてだ。そんな奴が口出ししていいわけもない。


 王女様に一度挨拶に行くことになったため、王女様の部屋に向かい中に入るともぬけの殻であった。


(??)


 中を見たエルフの人たちは、王女様を探し始めたので、俺たちはこの場に取り残されてしまった。顔もわからない俺たちがやれることも無いので、一旦自由行動になったので、エルフの里を探索することになった。



 ここがエルフの里か......。流石と言うべきか、あたり一面が自然に面していて心が休まる雰囲気をしていた。


(それにしても王女様って誰なんだろう......)


 そう思いながらも、今の俺にはできることがないため、あたり一面をぶらぶらと歩き始めた。数十分程経ったところで、ある一人の女性がモンスターに攫われているのを目撃してしまった。


(やばい!!)


 Sランクパーティのみんなに伝えるべきか......。でもそんなことをしていたら、攫われているエルフがどこに行くかわからない。そう思い、モンスターたちを追いかけ始めた。



 どれぐらい歩いただろうか。何度も見失いかけながらもやっとのことで攫ったエルフとモンスターを見つけた。


 あたり一面には、数十体にもなるモンスターの山。


(この数......)


 俺一人では対処できる数ではなかった。そう思っていた時、一匹のゴブリンが俺に気付いてモンスターたちに知らせた。


(!!)


 すると、モンスターの大群が俺に向かって攻撃を仕掛けてくる。俺はすぐさま、固有魔法---リミッター解除を使い、魔法の限界値を引き上げて、炎竜フレア・ストームを使ってあたり一面のモンスターを一掃する。


 だが、続々とモンスターがこちらにやってくる。


(クソ!)


 そこから魔法を使い、モンスターを倒すが、一向にモンスターが減る気配がない。そして、十分程度時間が経ったところで、Sランクパーティのみんなが駆けつけてくれた。


「クロ! 大丈夫か?」

「はい。皆さん。後はお願いします」


 俺は最後の魔力を使ってSランクパーティのみんなにリミッター解除を使う。するとSランクパーティの三人は驚いた顔でこちらを見てきた。


「今、何をした?」

「それは気になるところだけど、今はそんなことどうでもいいでしょ!」

「あ、あぁそうだな」


 三人は、あたり一面のモンスターをことごとく倒し始めてくれた。そこから数分経った時、モンスターの群れの奥の方で、エルフの女性が連れ去られていくのが見えた。


(やばい!)


 Sランクパーティのみんながモンスターを倒してくれているから時間があればこの状況も脱せられるだろう。だけどあの女性は? そう思った瞬間、体が動いていた。


「俺は、奥にいる女性を助けに行きます。ここはお願いしてもよろしいですか?」


 すると、三人は驚いた顔をしていたが、顔を縦に振って了承してくれた。俺はすぐさまエルフの女性を助けに向かった。



 ポーションを飲んで、魔力を回復しながら最深部に向かった。道中何度も、モンスターと戦った。だが、その時の記憶があまりない。なんたって、今は目の前の出来事でいっぱいいっぱいであったから。


 そしてやっとのことで、攫われたエルフの女性と一匹のゴブリンキングに遭遇した。


先程までは、魔力のみのリミッター解除であったが、今回は全身にリミッター解除を使った。すると案の定、目の前の魔族がこちらに魔法を使ってきた。


(!!)


 すぐさま、水玉アクア・ボールを使って炎の玉をかき消した。そして、蒸気に紛れて魔族付近に近づいて斬りかかった。


 腕に少しかすり傷を与えたが、すんなりとゴブリンキングに距離を取られてしまった。

 すぐさま、火玉ファイアーボール風切エア・カッターを使いつつ、距離を詰めて連続で斬りかかる。


 徐々にゴブリンキングにダメージを与えたが一向に倒せる未来が見えなかった。そんな時、エルフの女性が目を覚ました。


「え? ここって......」


 すると、ゴブリンキングはエルフの女性に攻撃を仕掛けた。


(やばい!!)


 俺はすぐさま、エルフの女性に守護リフレクト・ガードを使って守る。するとゴブリンの腕が始め飛んだ。


(え?)


 すると、エルフの女性が俺に魔法を使った。


(何だこれは......)


 力がみなぎってくる感じがした。そこからゴブリンキングに対して、魔法で目くらましをしながら接近戦で攻撃をする。


 ゴブリンキングもエルフの女性に対して攻撃することは辞めて、俺だけに攻撃を仕掛けてくるようになった。そこから数分経ったところで、剣が光出した。


(え?)


 そう思いながらも、ゴブリンキングに斬りかかると、一瞬でゴブリンキングを斬り殺すことができた。


(どうして......)


 今までリミッター解除を使って身体能力や魔力を強化してきたがこんなことが起こったことは一度もなかった。


 ふと我に返ってエルフの女性のもとに向かった。するとこちらにやってきて言われる。


「あなた、もしかしてあの魔法を......」

「??」


 この人が今何を言っているのかわからなかった。


「大丈夫ですか?」

「はい! ありがとうございます」

「それは良かったです」


 そこから十分程度待ったところで、Sランクパーティのみんながこちらに駆けつけてくれた。そして、あたり一面を見た後、俺に話しかけてきた。


「クロ、お前......」

「??」


 なぜか一瞬、不気味な目でこちらを見られたが、すぐさま笑顔になりながらリーダー---リードに抱き着かれる。


「よくやったな!」

「え? あ、はい」


 そこから、エルフの女性と共にエルフの里に戻った。



 王室で今回の騒動を聞かされた後、先程の女性が王室に入ってきた。


「先ほどは助けていただきありがとうございました」

「あ、はい」


(よかった)


 誰だかわからないけど、死ななくてよかった。すると、この女性が言った。


「お父様! 私、この人たちと一緒に冒険がしたいです!」


(え!?)

 

 お父様って言ったよな? この人、王女様だったの?


「......。エル。お前は、この国の第一王女なんだ。そう...」


 国王様の話を遮ってミシェル様が言う。


「攫われた理由が分かりますか? 私が弱かったからです。なのでこの人たちのもとで実力を上げたいと思っています。それにこの男性は......」


 そう言って国王の耳元でエル様が言った。すると国王様とエル様が俺を見てきた。


(え? なに?)


 何か悪いことでもしちゃったか? でもそんなことした記憶ないし......。


「そう言うことか。わかった。じゃあエルをこのパーティに入ることを認める」


 すると俺やSランクパーティのみんなが驚いた顔した。そりゃあ、いきなり仲間になるとか言われたら驚くに決まっている。それが王女様ならなおさらだ。


「リードにクロよ。ダメか?」


 リードさんが黙っていたので、俺は正直に答えた。


「俺は、このパーティ一員ではありません。臨時でこのパーティに入ったまでですので、一緒のパーティになるなら俺抜きでお願いします」


 そう。俺は今回荷物持ちとしてSランクパーティに同席させてもらった身であって、正式にこのパーティへ入っているわけではない。すると、リードさんが言う。


「いいですよ。クロも王女様も一緒に冒険しましょう」

「え?」

「クロは嫌か? 俺はお前の実力がどれぐらいかわからない。でも最低限、ゴブリンキングを一人で倒せるぐらいの実力があると知っている。だったらこのパーティに

いてもいいと思った」


 すると、国王が勢いよく立って言った。


「あのAランクモンスターであるゴブリンキングを一人で!! やっぱりエルが言っていることは本当なのか......」


 そして、ことごとく話が進んで、俺とエル様はSランクパーティに加わることが決まった。



 街に戻る道中、エル様が言う。


「クロ様はともかく、私も一緒にパーティ加入させていただきありがとうございます」

「はい。エル様もあの場で傷一つない時点でそれなりの実力はあると思いましたので、今後一緒に頑張って行きましょう」

「はい!」


 そこから、もう一度パーティメンバー同士で自己紹介をした。そしてあっという間に時間が過ぎて、街に戻った。


(あいつらと会ったら何て言われるんだろう......)


 なんせ、まだ一ヶ月も経っていないのに、勇者パーティからSランクパーティに加入してしまったんだ。


 俺が侮辱されるのは良い。でもSランクパーティのみんなが侮辱されるなら俺はこのパーティから......。そう思った。そしてギルドに着き、今回の報告がてら俺とミシェル様がSランクパーティに加入する手続きをした。


 その時、シャックたち勇者パーティと出くわしてしまった。


(......)


 するとシャックたちが小ばかにしながら話しかけてくる。


「こんな奴を仲間にするなんてSランクパーティも没落したもんだな」

「だな!」

「えぇ」


 その時、リードさんたちが言った。


「勇者様たちは逆にクロの実力が分からなかったのですか?」

「は? この無能に実力があるとでも? そんなわけないだろ」


 シャックがそう言うと、他のメンバー達も大声で笑った。そこで呆れた顔でミシェル様が言った。


「クロが無能ね......。勇者も所詮はこの程度なのね」

「は? 誰に向かって口をきいているんだ!」


 そう言ってミシェル様に対して怒鳴った。


「まあせいぜい今は、クロのことをバカにしていればいいわ。すぐにどれだけ今の発言がおろかだったかわかるから」

「へ~。言ってくれんじゃん。それを楽しみにしているよ」


 シャックは、そう言ってこの場を後にした。


「リアム、数日後にはあなたの行ったことが勇者たちにもわかると思うわ」

「え?」


 エル様が何を言っているのかこの時はわからなかった。そして、あの時言われた日から数日経ったある日、エルの父である国王や、エルフの偉い人たちがこの国にやってきた。


(え?)


 そこからまた数日経って一つの条約が結ばれた。


【クロを含むSランクパーティと私達、エルフの国は条約を結びます。何があろうとこのパーティのことを私たちは支援いたします】


 この条約は、世界各国で大きく出回った。なんせ今まで国と一パーティが条約を結ぶことなんてありえなかったのだから。


 ここから、俺たちSランクパーティの快進撃が始まり、勇者パーティの没落が始まっていった。


 そして、俺の固有魔法---リミッター解除の真の実力はここから始まって行った。



 連載予定の短編です。もしよろしければ、お気に入りやレビューをしていただけると幸いです。


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