虚ろの瞳

常夜零

第1話 「外れ者」

ー月が淡く光るー

ー暗い森ー

ー何も見えないー

ー眠るー

ー変わらない日常ー

ーだけどー

<他とは違う>





一人の少年が目を覚ます

年端もいかないボロボロの服に

錆び付いたナイフを携えた子供

今日もまた、獲物を探す

肉食獣のように息を殺し、一閃

そのナイフは鹿の首を見事に貫き

鹿は少年の右腕に無気力で横たわる

ふと、近くで草をかき分ける音が響く

大柄で弓を携えた男達が少年を見詰める

男A「死んだ目…“虚”か。まだ生きてやがる」

男B「とっととくたばれば楽なのによォ?」

男A「お?いい鹿持ってるじゃねぇか?」

男の1人が少年から鹿を奪い取る

少年は抵抗するも力量差によりすぐに奪われる

男B「おお!良い肉付きだぜ!“虚”にはもったいねぇな。こいつは俺達が有難く頂いてやるから、感謝しろよォ?」

隣の男が少年を見下し高笑い

ふと、不覚にも少年の腹が鳴る

男A「あぁ?返して欲しいってか?おいおい、“外れ者”風情が人間様に逆らうんじゃねぇよ!!」

男達が少年に襲い掛かる

少年の抵抗虚しく一方的にやられるばかり



ー何時間気絶してただろうかー



また夜に目を覚ます少年

やっとの事で川に着き、水を飲む

そして、僅かばかりの魚を取り、焼いて食べる

そしてまた、眠りについた



[この世界には、大きく5種類の人間が暮らしている。「平民」、「騎士」、「貴族・王族」、「魔導師」。そして5種類目には「外れ者」が存在する。“外れ者”とは、過去に大罪を犯した者、及びその直系血族がカテゴライズされているが、極稀に身体的理由で外れ者認定される者が居る。奇形児、先天性の病気等など。その中でもこの少年は特に珍しく「生まれた頃から目が死んでいる。」と言う理由だった。その他は殆ど他と変わらない。何処を見ているのか、何を考えているかも分からない人々や親はその姿を不気味がり“外れ者”となった。“外れ者”には基本的に名は付けられない。ただ、少年だけは“虚(うつろ)”と言う蔑称が付けられた珍しいケースだった。基本的には虐めであり、人としても見られない。奴隷になるか、はたまた少年の様に森等でひっそりと隠居生活をする以外生きる術は無かった。]


ーまた、朝が来た。起きなきゃー

少年は傷が完璧に癒えぬまま

その体に鞭打ってまた獲物を探す

その日々が、また始まる…





筈だったのだが





ーあれ?昨日の…ー

そこには、昨日少年を痛め付けていた男達が

その場に倒れていたのだ

触れると冷たい感触が少年の手に伝わる

何があったのか、少年には全く理解が出来なかった

そしてすぐ近くで、ある声が少年の耳に響く







ーこんな所に…子供?ー

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