口が裂けてるから言えない
シラタマイチカ
第1話保健室のネムリヒメ
黒澤町子はとても薄い命の色をしていた。
他の人間は生命力に溢れた明るい暖色をしているが町子の色に限っては薄い寒色だった
だからなんだって?
狙われやすい。
悪いモノに。
「ねえ朔夜くんー。町子ちゃんの近辺には命食べちゃいたい悪い奴がさ沢山寄ってくるだろう?だから町子ちゃんを囮にして寄ってきた奴をどんどんぶっ殺そう」
先日兄さんはそんなイライラする事を提案してきた
「俺がそんなアホな事了承するとでも――?」
「アホな事ではないよ。実際あの子の周りには悪いモノが沢山寄ってくるのは認めるだろ?前もお前は苦労してた。だからポイントの為に朔夜が監視して片っ端からぶっ殺したらさっさとたまるやろ」
兄さんは動画の編集をしながらまるでゲームの攻略を語るかのように得意げに語った。
その光景を思い出しただけでも腹が立つ
しかし実際ポイントは貯めないといけない。
「今の名前は朔だって。」
一人呟く。
ガヤガヤとした音がうるさい朝7時40分
町子は教室の入り口で佇んでいた。
教室に入ろうとしたら自分の悪口や噂が流れてきたからだ。
それでも知らないふりをしてドアを開けようと
試みたが手が震えて結局は出した手を引っ込めた。
そして他の生徒とは逆の道を、来た道を引き返し
一階の職員室に向かった。
深呼吸をして引き戸を引き、
「あの、2-Bの黒澤です。三島先生か伊藤先生はいらっしゃいますでしょうか…」
そう声を発した。
すると手前の席にいたジャージを着た男性教員が
ちょっと待ってなさい見てくるからと席を立った。
町子はこの男性教員が苦手だった、やたら距離が近いのだ。
セクハラとは微妙に言い出せないボディタッチをしてきたりする嫌な教員だった。
嫌な奴に会っちゃったなと… 更に気落ちしてしまう。
奥から男性教員が気苦労が絶えないのか40後半位の白髪が若干目立つ女性教員を連れて戻ってきた。
「黒澤さん、おはようどうしたの?顔色悪いわねぇ…」
「三島先生おはようございます、体調が優れなくて早退させて頂こうと思って…」
町子は担任三島と話をしたが答えはNoだった。
「二時間目迄は保健室で寝ていなさい、出席扱いにはしてあげるから。今日保険の先生人身事故で遅れてるから岡崎先生に鍵開けてもらって
先生もう教室行かなきゃだから…二時間目終わる時間になってもすぐれなかったら帰っていいから一度職員室に来てね」
最悪だ…岡崎とは町子が苦手な男性教員の名前だ。
いつのまにか保健室の鍵を手に持って準備して居る
「じゃあ黒澤さんゆっくりね」
三島は慌ただしく籠を持ち職員室を後にした。
岡崎は保健室に行ってきますと言い残し
強引に町子の青白い腕を掴み、自分のペースで歩く
「夜更かしでもしたのか??
彼氏と長電話でもしてたのか?黒澤〜」
いやらしい顔で岡崎は町子をチラチラと見る
「テストが近いので苦手な教科をやってました、私彼氏なんて…」
困った様子で答えると同時に保健室の前に着いた。
鍵を開けて貰い中に入ろうとすると岡崎まで入ってきた。
町子の腰を摩りまた様子見に来てやるからな
一緒に居てあげようか?と言い残しニヤついた顔を浮かべ保健室を出た。
ゾッとして町子は保健室に鍵を掛けた。
「キモかった…」
手に持った荷物を床に置き
カーテンを開けて真っ白なシーツに身を沈めた。
「学校から居なくなりたい…」
重苦しくなるチャイム
騒がしい声
カチカチと鳴り響く時計。
いつのまにか寝落ちていた。
町子が寝るのを待っていたかのように
壁から何かが顔を出した
「あっ…あ…ああああああああ」
得体の知れないモノは地から響くような叫びを上げたがその声はおそらく誰にも聞こえていない。
得体の知れない物は辛うじて人のような姿はしてはいるが不気味なバランスをしていて頭がやけにデカイのだ。
どこを向いているかわからない目をぎょろぎょろと動かしたかと思えば首を高速でブンブンと左右に振り回しながら町子に近寄ってくる。
ペタリ……ペタペタペタペタッ……
カーテンを開けるわけでも無く隙間からカーテンの内側に入り込んだ時には不気味な物の顔はデパートのバルーンの様に大きく膨らみすぎていた
不気味な物は町子の前に来ると左右に振っていた首を更に早く振り回してからパクリと町子の上半身を口に入れた。
その瞬間得体の知れない、不気味な物は吹き飛びその衝撃で町子は床に放り出された。
「サミシイサミシイザミシハミシイ…」
起き上がった得体の知れないモノは起き上がり首を振り回しながら町子を再度食べようとズルズル音を立てながら近寄ろうとするが、
すごい速さで近寄ってきた黒い物体の方が速く再度蹴りを入れられた
「口裂け女の息子舐めんてんじゃねーぞ」
得体の知れない物は声がした方をゆっくりと
振り向いた。みるみるうちに大きな顔は目が吊り上がり先程より怒りをあらわにした禍々しい物へと変わっていた
「死ねシヌシネシネシヌ」首を左右に振り回しながらグパッと大きな口を開き襲いかかってくるが
黒い物体……朔の方が何倍も速く
朔が振り下ろした日本刀で得体の知れないモノは真っ二つになったが朔は更に細かく得体の知れないモノを切り刻み
マスクを外し肉片を食べた。
「まずっ」と言いながらなんとか飲み干した所でピピッと
電子音がして朔はポケットから端末を取り出すと
来ていたメールを開く。
《ホケンシツノネムリヒメ20P》
それは異界から自動的に送られてくる物だった。
「はぁ?…どう見てもヒメって感じじゃないじゃん誰だよ名前つけた奴…」
嫌そうな顔をしながら端末を仕舞い
町子のそばに行き抱きかかえた。
「町子、町子。」
名前を呼ぶが寝息を立てたままで起きる気配が無かった。
学校の様子も〈覗き見〉していたからこそ一人置いて帰るのは気が引けたので仕方なく町子を背負い
保健室から出ると
授業が終わり立ち寄ったのか40代位の白髪混じりの女性に声を掛けられた。
「ちょっと…貴方、背中の黒澤さんよね?貴方誰ですか?」
と言われ朔はじっと女性の目を見た後会釈をした。
会釈をしたあと三島は無表情になりそこにただ立っているだけになった。
朔は町子を背負ったまま帰路に着いた。
(腹立つけど確かに沢山寄ってくる…)
通常雑魚を狩ると5ポイント程しか入らないのに
今回の頭でっかちは20も加算された。
「毎回倒せりゃいいけど…」
ほんの少し不安になった。
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