やり直してもいいのだろうか?

@kotosihasarudoshi

第1話 自分は漸く『終われたんだ』

 思い返してみれば後悔しかない人生だった。

 物心つく前はやんちゃであったらしいが、物心がついてからはそれが嘘のようになくなってしまった。事ある毎に婆ちゃんや両親に頭ごなしに否定されてきたからだろうか。小学生の時は人との距離感が分からなくてあまり人づきあいがうまくできなかった。中学の時はそれが原因で周りの人たちに都合のいい人として扱われ、反りが合わないという理由でいじめられ、更に喋る事が少なくなった。


 高校では文化部系の部活に所属していたが、正直途中から辞めたくなった。多少良い成績を残してはいても、それを生業としたい訳でも、大学の推薦を貰おうと考えたりしていた訳でも無く、趣味の一環としてできればそれでよかった。分かり易く言うと、自分は『エンジョイ勢』であって『ガチ勢』ではなかったのだ。


 大学の時では受験に失敗し一浪で済んだとは言え両親にはかなりの負担をかけてしまった。そして家から大学までは遠すぎる為、寮に入る事にした。しかし、無理やりにでもバイトをしようと考えてしまったせいで詐欺広告に引っ掛かり、人としてあまりにも愚かな行為をしてしまった。


 それが自分の事を客観的に見るには十分すぎたのか、俺は自分にも周囲にも期待することを辞めた。根拠のないモノに期待することを辞めたのだ。


 それから俺は基本一人でいるようになった。誰かに絡むというのも全然なく、基本的に講義を受け、寮でご飯を食べた後は講義の課題や予習くらいしかしていなかった。ゲームやアニメは好きではあったが、時が経つにつれそれすらも関わろうとしなくなった。


 それから俺は大学を卒業し、寮がある会社に就職することが出来た。

 一応家電等は元々備え付けらしいので問題はなかった。そこから俺は我武者羅に働いた。昔の事を考えると自分の行動による後悔の念と胸糞悪い思い出を思い返してしまうからだ。まるで後ろを振り向かず全力で走る子供の様に、身を削りながら働きすぎたせいで、身体を壊してしまった。


 それからの俺は自暴自棄になった。それによって借金とかに手を出してしまい、結果として破滅した。あの人たちにとっては俺は『家族』とは言わないだろうが、書類上の関係を持っていれば間違いなく家族にも悪影響を及ぼしてしまう。少なくともそうなる前に俺は家族との縁を切っておいた。絶縁状を提出していた為、俺の名字は家族のモノとは違う名字で戸籍登録を変更したので、結果として俺のやらかした事は、俺自身で尻ぬぐいしなければならなくなった。


 ここまでは良い。確か尻拭いの為に俺は裏の仕事(強制)を借金完済するまで働いていた筈……多分過労死したんだろう。完済し終わって漸く外に出れると思った矢先に意識が途切れたんだよな。

 俺は自分の覚えている限りの記憶を思い出しながら思考する。


ならば、


周りを見渡すと、草木に覆われているわけでもなく、海辺の様な場所でもなく、壁一面が真っ白で、家庭用のテレビの様なモノとリモコンが置かれた部屋の様な場所にいた。とりあえずテレビとしておこう。


……そういえば学生時代の時に、よく『転生』モノを読んでいた気がする。正直前世の記憶を持ったまま第二の生を謳歌すると言った内容が多かったが、正直俺には向いていないと感じた。話の内容が面白くないとか、批判的な意見ではないのだ。前世で抱えていたモノを、第二の人生でも抱え続けなければいけないのは、かなり苦しいものだと考えているからだ。


だとすれば、これは俺にとっては『贖罪』の様なモノなのだろうか?どの時代に生まれ変わるかは知らないが、個人的には地獄にでも送られて強制労働させられる展開だと思っていたのだが……


そんなことを考えていると、テレビの画面がついていた。


『やり直したいですか? YES/NO』


やり直す……?一体何の事だ……

そりゃあやり直したいことなんぞ幾らでもある。ないという人間は世の中に誰もいないだろうよ。そんな人がいれば是非あってみたいがね。

とりあえず俺はリモコンを手に取り『YES』の方を決定した。


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