239 漆黒の子山羊(ゴート) 05
「まずいな……とりあえず皆から引き剥がさないと……」
俺は一気に
「「「「「ままままままままてててててててて」」」」」
移動速度はそれほど速くないな……足の運びを見ても巨体がそれなりに重いらしく、時折その巨体がぐらりと左右に傾きながら動いている。
おい、アルピナ……俺が死んだらお前もいなくなるだろ? あれの詳しい情報を教えろよ……その言葉に反応したのか心の中にアルピナの気だるそうな声が響く。
<<あなたのお願いなら仕方ないわねえ……
ふむ……であれば、少し考えていた魔法を
今の俺であれば……なんとなくだけどできるという気がする……。
<<
この世界の学問はそれほど発達をしていない……というよりも実際に神様が存在していたり、魔法技術の発達によって学問は神学、悪魔学、魔法、精霊学、歴史、戦術、戦略といった方面に偏っており、物理やその他の科学技術などは未発達だ。
例えばどうして空中に放り投げたものが落ちてくるのか、とか摩擦によって火が付くのはなぜか? という分野において誰も関心を持っていない。
意図的に持たされていないのか? とは思ったがそうではなく、例えば神学などで引力について説明がされていたりもする……
例えば風の神の妻であった大地の女神が、空に放ったものを夫に取られないために引っ張ってるんだとか、なんともそれらしい説明などを作り上げており、ま、まあ……そういう考えなら……と子供の頃に少し呆れを感じたりもしたものなのだけど。
俺はこの世界であれば、前世知識である物理や引力などを使った魔法が開発できるのではないかと、常々考えていた……そのベースとなっていたのは昔企画職の連中と遊びで考えていた広範囲を攻撃するって単純なものだ。
<<いい、いいわ! あなた発想が素晴らしいわ……さすが私の愛した人だけあるわ……>>
<<
<<……構築した魔法の名前を決定してください……>>
そうだな……頭の中に展開後の魔法のイメージが浮かび上がっていく、この魔法はすでに名前を決めてある。
俺は
それもそれであまりスマートではないなあ……とは考えていた、そこで結界内に効果を限定するというのもこの魔法の特性の一つになるのだろう。
「……では、本邦初公開……
結界内に擬似的な強い重力が発生するとどうなるだろうか? 魔力を代用して無差別かつ広範囲に重力を発生させる、というのはすでに実験済みだ……ただ莫大な魔力の消費と、コントロールが効かないというデメリットがあり、さらには範囲が広がることによって効果が分散してしまって想定していた強い重力は発生させられなかった。
だけど限定された空間であれば……魔力が拡散せずに一定方向へと重力を発生させ続けることができるはずだ。
「……
「「「「「なななななななにににににに」」」」」
結界内の魔力が一気に収縮していく……それと同時に重力の代わりに収縮していく魔力によって
メリメリと音を立てて太い肉体がひしゃげ、ドス黒い血が吹き出す……悲鳴と骨や巨大な何かが潰れ、破砕されていく音があたりに響く。
魔法による魔力の収縮が結界の中心点に向かって強い力で引き込んでいく……魔力をさらに収束させるとより中心点として設定している魔力はより小さく、密度を増していく。
「この魔法の先にあるのは……ま、
俺は一気に魔力の収縮を解消させる……魔力を使った擬似重力の良いところは、魔力の流入を止めるとそこで効果が消滅するところだ。
まだ改善の余地はあるが、一定の効果を得られたと言っていいだろう……結界を解くと、ゴトリ……まるで小さなボール状に固められた黒い物体が地面へと落ちる。
<<……魔法名
<<ライブラリ内への記録完了、再現可能。また熟練度の向上により高速化などの改善が可能です>>
ふう……なんとかなったな。
しかも新しい魔法の構築も完了……そのうちクリフ・ネヴィルの魔法書なんてできちゃうかもしれないな……防御用の結界が解かれ、慌てて俺の元へと走ってくるアイヴィーとアドリア、そしてゆっくりと苦笑いを浮かべながら歩いてくる他の仲間を見つけて軽く手を振ると、彼らに向かって話しかける。
「……砦に残ってる他の
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