113 ゲルト村防衛戦 04
「フハハ! 剣の腕は確かに其方は素晴らしい……だが、油断したな」
ダビドが高笑いをしながら苦しむアイヴィーの眼前へと剣を突きつける。彼女は全身を襲う激痛と、ひどい目眩を感じて立つことができない。しかし
「ううっ……こ、こんなこと……」
油断した! とアイヴィーは心の中で歯噛みする。
刺された太ももからジクジクとした痛みが伝わり、体の震えが止まらない。目眩はひどいものの、まだ眼を閉じるほどではない。帝国貴族家の習いとして子供の頃から少しづつ毒への耐性をつけるための訓練をさせられてきたことがあり、その耐性がかろうじてアイヴィーの意識を繋ぎ止めている格好になっている。
とはいえ全力で動くには無理をしなければいけないだろう。今はまだ、一気に動くタイミングではない……。震える手を押さえながら、
「どうした、先ほどまでの勢いは……所詮は女だな」
アイヴィーの足の間に
元騎士とはいえ、手段を選ばない戦い方や相手を自分のフィールドに引き摺り込むためのブラフなど、手練れの手腕ではあったのだ。
「お前はこの後周りにいる
ダビドは笑いながら周りの
慰み者だと……? 私がそんなか弱い小娘だと思っているのか? 全身の筋肉を軋ませながらアイヴィーは、怒りに体を震わせながらゆっくりと立ち上がる。その姿を見てまさか動くと思っていなかったダビドと
「な、なんだと……? 毒が効いていないのか?」
「あなたの毒は効いてるわ、かなりね……」
彼女が
「はっ……私を慰み者にする? やれるものならやってご覧なさい」
アイヴィーは傷を負っているとは思えないほどの速度で一気にダビドへと接近すると、無造作に
「またそれか……何っ?」
その攻撃を円形盾を使って受け流そうとしたダビドの目に、彼女の白い手がアップで映る。そのままアイヴィーはダビドの顔面を掴むと腕力のままに地面へと叩きつける。カランと音を立てて転がる
そしてそのままアイヴィーは地面へと叩きつけたダビドに馬乗りになり、拳の連打を顔面へと繰り出し始めた。あまりの衝撃にダビドの目から涙が溢れる。それに構いもせずに次々と拳を叩き込んでいくアイヴィー。
「ゴバァアッ! アビャアアッ!」
情けない悲鳴をあげてダビドはアイヴィーの両拳の連打を顔面に受け続けていた。この少女の膂力は見た目よりも遥かに高い……さらに驚きで防御体勢すら取ることができずにどんどん変形していく顔面、血があたりに飛び散り凄惨な風景へと変わっていく。
なんとかもう一度尻尾を刺せば……そう考えて彼女の死角から尻尾を伸ばすダビド。しかし、その行動を予想していたのかアイヴィーは見ずに尻尾をスレスレで掴むと、そのまま尻尾をへし折る。
「あギャアアアアア!」
悲鳴をあげて苦しむダビド。そのつぶれ始めた顔を見て唇の端を釣り上げ、ダビドの返り血で血まみれになったアイヴィーが咲う。
「……このゲス野郎! もう死になさいッ!」
アイヴィーの渾身の力で放った正拳突きがダビドの顔面を完全に破壊する。大きく痙攣をすると、ダビドの四肢が地面へと落ちた。ため息をつくと、血塗れのアイヴィーが立ち上がり……地面に落ちた
「お前らみたいな汚れた生き物は、私が鏖殺してあげるわ!」
血塗れの少女が
ギリギリとアイヴィーの胸が痛む、毒に耐性があるとはいえ流石に無理が続くとそのうち動けなくなるだろう、だから早めにこの辺りの敵を一掃しなければいけない。
金色の死神が戦場を駆けていく。悲鳴と怒号があたりに響き渡っていくのだった。
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