51 黒いローブの魔道士
「あらあら、負けちゃったわ」
ネヴァンは
「もう少し頑張れる子だと思ったのに……ロレンツォ、あなたはイケない子ね」
「少々弱すぎるな」
「もう少しやれるかと思ったのですが……魂はそこまで強くなかったようです」
ネヴァンからしてもロレンツォがここまであっさり倒されるとは思っていなかった、というのが本音だ。もう少しやれると思ったが、見込み違いなのか……と頭を下げつつ考える。
「貴様が見誤るのも仕方ない。敵側に使徒がいたのだからな」
「使徒でございますか……あの
ネヴァンの目から見ても、
「おそらくな、使徒となると厄介だ。
まあ、それもゲームとしては余興の一つだな、と
「貴様はどうする?使徒が敵方の駒として盤面にいるとして、貴様の
その言葉にネヴァンは顔をあげ、くふ、と笑う。
「我々の
その言葉に
「では貴様に任せる。私は私の行動を終わらせよう」
「承知いたしました」
ネヴァンは再び頭を下げ、
「使徒であっても、心はヒトと変わらない……それは前回知ったわ。だから、あなたの大事なものを壊すしかないわね」
アイヴィーは震えながら座り込んでいる。自分が戦っていた相手が誰だったのか、それを考えれば仕方ないのかもしれない。
「わ、私……ロレンツォだって知らなかった……」
下を向いて震えているアイヴィー、むしろ誰も知らなかったのだから仕方ないと思うが、それでも散々斬りつけ、剣を突き刺し、攻撃をした相手が「堕ちた婚約者」だった、となったらそれは確かにショックだろう。
「アイヴィー、仕方ないよ。俺たちは誰もロレンツォだって知らなかったんだ」
「そうですよ……アイヴィーさん、私たち全員がそれを知りませんでした」
アドリアがアイヴィーに優しく話しかける。トニーも、マックスもその言葉に頷く。しかし視線の先には横たわり、
「カスバートソン令嬢、これはロレンツォ殿を使った
マックスがアイヴィーに語りかける、が、彼女は頷くものの表情がその言葉に納得できていない。涙を流しながら、何度も頭を振る。
「……
アドリアが疑問をマックスに問いかける。王国では
「少なくともカンピオーニ家はロレンツォを廃嫡する方向に動くでしょうね……
そうですか、と頷くとアドリアは何かを考え始める。
忙しく動き回る守衛や
俺はその視線の先を探る、上か……。
屋根の上を見上げると、そこには黒いローブを着用し、薄桃色の長い髪を垂らし、フードを深く被った何者かが立っていた。その人物は俺の視線に気がつくと、恭しく頭を下げ……暗闇に溶け込むように消えていった。何者だ?あの感じ、昔どこかで感じた不快さだ。
俺が全然違う方向を見ていることに気がついたアドリアが、こちらに寄ってきた。
「怖い顔してどうしたんですか?」
「いや……
その言葉にアドリアが周囲を慌てて確認する……が喧騒と炎だけしか周囲には存在していない。
アドリアが不安そうに呟く。
「まさかとは思いますが、大学の関係者でしょうか……」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます