12 戦闘開始!無事には済まなそうな状況になった
「聞こえるか? ……もうすぐだぞ」
駐屯地から近い、少し広めの空き地の周りに俺たちは隠れていた。
作戦として、この空き地に
「クリフ、ジャクーと一緒に退路を断つ方に入ってくれ。ジャクーはこう見えても戦い慣れている」
カルティスが最終的な位置の調整を指示している。このチームはセプティムという圧倒的に強い戦士がいるため、力押しで物事を解決するのかと思っていたが、カルティスが補佐役として戦術面で補佐をしている面が強いようだ。
ジャクーと一緒に入り口付近に隠れていると、かなりの速度でセプティムとジャジャースルンドが空き地に飛び込んできた。
「ジャジャー、反撃に移ろう」
「応」
急に仲良くなってない? この二人。そんなことを考えていると不気味な叫び声をあげながら
セプティムたちは足がはやいとはいえ、動物のような速度では加速できないらしい。
「さあ、来い!」
セプティムが
グシャリと嫌な音を立てて、血飛沫を上げながら
「今だ!」
カルティスの合図と共に隠れていた仲間が立ち上がり、一斉に攻撃を繰り出した。弓矢、投石、魔法の攻撃が
が、まだ立っているものがいる。
残りの
ジャクーと俺も退路を塞ぐために立ち上がり、武器を構えて接近する。こちらには鹿頭の
かなり冷静に動ける個体のようだ。
「行くぞ!」
ジャクーが鹿頭に
「思ったよりも力が強い……」
「大丈夫ですか?!」
俺はジャクーを援護しようと、
危ない! 反射的に横に飛び退くと、それまで俺がいた場所を斧の一撃が空を切る。
危ない……これ食らったら即死だったな。バルトの剣術稽古に付き合っていなかったら何もできずに死んでいたかもしれない。
体勢を立て直して攻撃が来た方向を見ると、
「こども、みがかるい……こども、くうとうまい、くわせろ」
山羊頭が涎を拭おうともせずに斧を構えてゆっくりと近づいてくる。この個体はカタコトでしか喋れないようだ、明らかに目が獲物を狙う目だ……正直いうと怖い。周りを見ても皆戦闘で余裕がないようだ、これはやるしかない。
「炎よ、我が敵を打ち倒す力となれ!
左手で
「くわせろォォォォ!!」
俺は後ろに大きく飛び、その攻撃を回避する。
「にげるなァ! ……くわせろォ!」
斧を振り回しながら山羊頭が次々と攻撃を繰り出してくるが、俺はバルトの剣術稽古に付き合ってきたこともあって、バックステップやサイドステップを多用することで、攻撃を回避することができた。
バルト……父ちゃん、戦士としては結構強いんだな。山羊頭はバルトほどの技量がないらしく、動作が鈍い。
攻撃の合間に魔法を撃ってみよう、とは考えてみたものの疲れも見せずに攻撃を繰り出してくる山羊頭の勢いもあって、集中できるタイミングが掴めない……。
「クリフ! ぐっ……この……」
ジャクーが鹿頭と押し合いながら叫び、押しのけようとして足で鹿頭に蹴りを入れている。
が、鹿頭は頑丈な肉体のようでびくともしない。
他の冒険者達は大丈夫なのだろうか。
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