転生したくて「死にたい」と叫んだら、閻魔様の審査にかけられた

@haya_watson

第1話 「死にたい」と叫んだら、そこは真白な部屋だった


 明らかに致死量だった。


 吐き出されたそれは赤い化粧を施されて、流れていく。


「ああ、これが———」


 飛散していく無数の雫は、大気の中に酸化結合を起こしながら、ゆっくりと、ただゆっくりと時間の中に融けて黒めいていった。


 悲嘆と。

 憂愁と。

 憐憫と。


 凡てが入り混じって、私の中に落ちていった。

 飛散した一つ一つの結晶も、次第に溶け込んでいった。


「いつのまにか」


 さっきの雫は、地面に落ちる頃にはもうすっかり見えなくなっていた。

 きっとこういうのを「美しい」だとか、「綺麗」だとか、「やっぱり」だとか思ってはいけないんだろう。


 もっと、カラフルに、ビビットなものをイイって言わなきゃいけないんだろう。


「でも、思ってしまうの」


 この大量に吐き出される赤いものは、さっきまで「この中」にあったものなんだって。


 そう思うと———


 

 実感できる。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る