第70話 情報
ロブロブ達の集めた情報によると、やはり王都では加護持ちが行方不明になった事例が複数あった。そのいずれもまだ見つかっていないらしい。
"それで、三木達が泊まっていたと思われるのはここか?"
ラビオの拠点内、幹部だけが立ち入りを許された部屋の中にいるのは、俺とロブロブだけだ。テーブルの上には手書きの地図が広げられている。この地図はロブロブが描いたものだ。厳つい見た目に反して細かい仕事が得意なようだ。
"ああ。その宿に鼻にケースをつけた男が出入りしていたと目撃情報があった。お前の言っていた男で間違いないと思う"
鼻ケースを付けた男が三木以外にいるとは思えない。
"俺達はその宿に移動する。動きがあれば知らせる"
"何をするつもりだ?"
"集まってきた情報から行方不明になった者には幾つか共通点がある。一つは加護持ち。もう一つはスラムの住人、もしくは冒険者や行商人。つまりいなくなっても大きな騒ぎにならないような奴等が狙われている"
"……囮になるつもりか?"
ロブロブの表情は厳しい。
"今のところ、被害者の共通点ぐらいしか情報がないからな。こちらで探すより、向こうから来てもらった方が早そうだ。幸い、加護持ちが3人もいるしな"
"……分かった。こちらでも何か新しい情報が入れば知らせにいく"
"頼んだぞ"
#
「おっ、結構綺麗な宿っすね」
「デモ、オタカインデワン?」
コニーが料金を気にして震えている。黛は既に姿を消しているのでなだめるのが大変だ。
「金のことは気にするな。こう見えて和久津は大金持ちだからな」
「ちょっとパイセン!自分持ちっすか?」
「ワクツサン、ゴチワン」
「まあいいっすけど。しかし、コニーちゃんの日本語はこのままでいいんすかね?」
「上達スピードとしては素晴らしいだろ。それに、もはや手遅れだ。さぁ、いくぞ」
三木達が泊まっていた宿、"不眠の蛙亭"の扉を開けると、そこはすぐに受付だった。恰幅のよい女が笑顔を向けている。
"3人、それぞれ別の部屋で泊まりたい。空いているか?"
"いらっしゃい。3部屋なら大丈夫だよ。何泊だい?"
"とりあえず5泊だ"
"なら、前金でもらうよ"
ふむ。【念話】で話しかけても驚かないか。それほど一般的なスキルではない筈だが、客商売をしていると慣れたものなのか?
"食堂はあるか?"
"ははは!おかしなことを聞くねぇ。食堂のない宿なんかあるもんかい。一階の奥が丸っと食堂だよ。ウチは酒の種類が豊富なんだ。いっぱい飲んでおくれよ"
"それは楽しみだ"
女は鍵を渡しながら、少し視線をずらした。ちょうど首の刻印の辺りを見ていたようだ。
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