第49話 目々野の視聴

ドアの鍵を回す音がした。ああ、また面倒くさいことが始まるようう。


「目々野さん!フィロ君のライブ配信が始まりますよ!必ず視聴するようにって、ボスから指示が出てます。早く食堂に行かないと!皆んなもう集まってますよ」


いつもの金髪女が勝手に部屋に入ってきて、楽しそうに言った。


「フィロ君?誰?」


布団の中から問いかける。


「帝国の皇子様ですよ!何回もその葛籠を抜けて地球に来てるじゃないですか!!目々野さんも会話してますよ?」


ああ。あの子供のことかぁ。あの子、いつもしっかり挨拶してくるからプレッシャーなんだよなぁ。


「さっ、行きますよっ!」


「おんぶ」


「えっ!?」


「お・ん・ぶ」


金髪女が声を詰まらせた。ふふふ。これで諦めるだろう。


「おやすみ」


「もうっ!わかりましたよ!おんぶすればいいんでしょ?」


布団が捲られて、身体がふわりと浮いた。


「こう見えて力持ちなんですから!行きますよ!!」


「ちょっと、下ろしてくれようう」


「駄目です!!」


おんぶ揺れるようう!



######



「もうっ!目々野さんがダラダラしてるから配信始まってるじゃないですか!!」


「別に観なくていいし」


「子供みたいなことを言わないでください!」


食堂の巨大なモニターにはフィロ君?とフィロ君によく似たおっさんが映っている。


"私がゲンベルク17世だ。長い間、病気で寝たきりだったがやっと皆さんの前で話が出来るまでに回復した。これは日本の医療技術のおかげだ。心より感謝する"


このおっさんも日本語上手だなぁ。フィロ君もペラペラだけど。異世界では日本語流行ってる?


"さて、今日は我が国で何が起きていたのかを説明する為に私はやってきた。決して愉快な話ではないが、この配信を観た人は周りに伝えて欲しい"


うわあ。既につまらない話になってるようう。もう寝そう。


"私が病で床に臥している間、ーー2人の皇子ーー後継者ーー加護ーー"


"ーーアメリカーー中国ーー電気ーー鉱山ーー天然ーー採掘権ーー貴族ーー抱き込みーー"


"ーー薬物ーー植民ーーフィロメオーー18ーー"


「ちょっと!目々野さん!起きて下さいよ!!」


「……起きてる」


「完全に寝てましたよ!!」


「……完全に起きてたよう」


「じゃ、フィロ君パパがなんて言ったか教えて下さいよ」


「ええと、2人の皇子がいて、名前はアメリカと中国。天然の薬物でフィロメオ18禁?」


「全然聞いてないじゃないですか!!」


「どうせ大したこと言ってないだろうう?」


「世界を揺るがすような情報でしたよ!!」


金髪女が僕の肩を揺すった。なんでこんなに興奮してるんだよううう!!

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