第40話 異世界課
集会所で富沢と打ち合わせをしていると、いつもの門番が慌てて駆け込んできた。エジンが知らない男を連れて駐屯地へやって来たらしい。
新宿ダンジョンの踏破者を連れて来たのだろう。そのまま駐在員になるのかもしれない。
「ここまで案内しろ」
「ショウチ!」
威勢の良い返事をして門番が戻っていった。
「さてさて、どんな男でしょうねぇ?」
富沢は額に汗を浮かべながら言った。その身はサウナスーツに覆われている。いよいよ葛籠を抜けるのが怪しくなってきたので、本人も危機感を感じているらしい。
「まともな奴であることを祈るよ。これ以上変態が増えたら捌くのが大変だ」
「ほほほ。全くですねぇ」
「お前も含まれているからな」
「またまたご冗談を」
少しして、足音の後に扉をノックする音が聞こえた。来たか。
「入れ」
エジンに連れられて入って来たのは、いかにもサラリーマンという風体の中年の男だった。
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「君は自分が何をしているのか、分かっとるのかね!」
エジンが連れてきた男の名前は轡田くつわだ。日本エクスプローラー協会に新設された異世界課の課長らしい。
「こちらのすることには干渉しない約束の筈だが?」
「限度ってものがあるだろ!!私が異世界課の課長になったからには、君の好きなようにはさせん!!」
轡田は泡を飛ばして声を上げる。
「もしかしてルベリートのデビューの件か?勘違いしているかもしれないが、あれはイメージビデオだぞ?AVではない。一度観てみるといい」
「その件じゃない!!」
富沢を見ると、お手上げのジェスチャーをしている。
「ならば思い当たる節はないな」
「フィロメオ殿下の件だ!!」
「フィロメオの何が問題なんだ?」
「アメリカから強い抗議が来ている。日本が第3皇子を擁立して帝位を狙っているとな」
エジンを見るとゆっくりと頷いた。どうやら本当のことらしい。
「ということは第1皇子か第2皇子のどちらかをアメリカは推している?」
「……そうだ。第1皇子にはアメリカ。第2皇子には中国がそれぞれ後ろ盾になっている」
轡田は頭を押さえながら続けた。
「君が仕掛けたYoutobeのチャンネルのせいで、地球におけるフィロメオ殿下の知名度や好感度は非常に高い。アメリカは第1皇子が帝位を継いだタイミングでゲンベルク帝国との正式な国交を結ぶつもりだったのに、、」
「それを俺が邪魔していると?」
「そう言うことだ」
「そして、もっとやれと?」
「そんなわけあるか!!」
「冗談だ。一度フィロメオをこちらに呼び戻そう」
「おおお!分かってくれたか!!協会の上の方は随分と君のことを酷く言っていたが、話の分かる男で助かったよ」
「流石に状況が状況だからな。さあ、長旅で疲れただろう。今日はゆっくりしていってくれ」
轡田はご満悦で宿に入っていった。きっと良い夢を見ることだろう。
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