第38話 男7人、猫1匹 ※閑話
「……ニャオ」
猫又の夏目が咎めるように鳴いたが7人は無視した。その7人とは、俺、和久津、富沢、三木、グランピー、ルクハルト、フィロメオだ。
広々とした和久津のマンションのリビング。俺達は大型テレビの前に集まっている。6人がソファーに腰を下ろし、和久津だけが立ち上がった。
「これより、AVアワードを開催します!!」
画面には"AVアワード"の文字が大写しにされ、大袈裟なSEがリビングに響き渡る。俺達は囃し立てるように拍手を続けた。
「今年発表されたアダルト動画の中から、最も優れた作品をワタクシ和久津が独断と偏見で決定するAVアワード!今年も無事開催することが出来ましたー!!」
スピーカーから拍手と歓声が流れる。随分と作り込んでいるな。
「ではー、早速いってみましょう!先ずは企画賞からの発表です!!」
ドラムロールが流れる。
「企画賞はSDOの"AIは女性を愛せるのか!?"です!!」
歓声と拍手が流れ、男達も声を上げた。
「ほほほ!これは良作でしたねぇ。流石は和久津さんです」
「一体、どんな作品なんですか?」
フィロメオの好奇心を刺激したようだ。
「この作品は何万時間もエロ動画を見せたAIを積んだロボットが女性を満足させることが出来るのか!?という実験的な作品です!!」
「サッソクミヨウ!」
グランピーが急かす。
「では、ダイジェスト版をどうぞ!!」
部屋の照明が暗くなった。
######
「ではいよいよ、最優秀賞の発表です!!」
一際大きい拍手と歓声が流された。
「年間5万本を超えて発表されているアダルト動画の頂点に輝くのはどの作品なのか!?では、読み上げます!!」
ドラムロールが流れ、照明が落とされた。テレビの光が消え、プツンという音と共にスピーカーからのSEも止まった。
リビングは真っ暗になり、しばらく静寂が流れる。演出にしては長すぎる間だ。
「あれ?」
和久津の間抜けな声と同時に明かりが戻った。
「和久津さん!何をしてるんですか!!」
怒気のこもった五条の声がリビングに響き渡った。
「フィロ君に悪影響です!フィロ君は私が連れて帰ります!!」
和久津を責め立てる五条の後ろでは、望月にマレーン、レベッカにルベリートまでいる。全員腕を組んで仁王立ちだ。
「ワシヲノケモノニシタバツジャ!!」
ルベリートがニタニタと笑う。こいつが漏洩元か。
「さっ、フィロ君行きますよ!」
「えっ、あっ、はい」
五条がフィロメオの腕をとって部屋から出て行った。他の男達も女性陣に諌められ、とぼとぼと部屋から退出していく。情けない奴等だ。結局残ったのは俺と和久津だけだ。
「くっ、それでも最優秀賞の発表です!!」
和久津が意地でAVアワードを継続させた。流石だ。
またドラムロールが流れる。
「最優秀賞は、ひゃっ!!」
すっと現れた黛が大鎌を和久津の首に添えた。
「残念。一人でやってて。サブローは私と帰る」
絶句する和久津から離れて黛が俺の手を取った。
「帰ろ」
「……わかった」
リビングから出る際に振り返ると、夏目が和久津の肩に乗り、慰めるように鳴いていた。
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