第31話 最強の盾

「……これは凄い」


富沢がつぶやいた。確かに凄い。リリパット達の絶え間ない攻撃を羞恥の盾が悉く防いでいる。


近接スキルを放ったリリパットが退き、入れ替わったリリパットがまたスキルを放つ。もちろん後方から遠距離スキルも放たれる。


だがどんな攻撃も分厚い盾に防がれ、三木や望月に届くことはない。


「三木にどんな魔法を使ったんだ?根岸」


いつの間にか隣りに立っていたエジンが驚いたように言った。


「さあな。三木が勝手に恥ずかしがっているだけだろう」


「今までどんな辱めを受けても、あれほどの盾が作られることはなかった。あれは異常だ」


「お前でもあの守りは抜けないか?エジン」


エジンの顔つきが変わった。


「……俺に斬れないものなどない」


リリパット達のスキルが散発的になってきた。そろそろ弾切れか。もうひと盛り上がり欲しい。


「ならば見せてみろ。日本最強のエクスプローラーの力を」


「……よかろう」


エジンが剣を取り出して歩き始めると、何かを感じたのか野次馬達が飛び退き、一本の道が出来た。


その様子に気付いた兵士達の手も止まる。リリパット軍の輪は崩れ、三木達とエジンが正対した。


「エジン!やろうっていうのか?今日の私達は一味違うぞ!」


望月が煽る。エジンは無言で剣を抜いた。


ザンッ


羞恥の盾が一枚、切り捨てられた。


「クッ!盾で押し潰してやる!三木、進め!!」


四つん這いの三木がエジンに向かい、盾がエジンを押し潰そうとするが、その度に切り捨てられる。


「もっと強い盾は出せないのか!!」


「今でも相当恥ずかしいんです!これ以上恥ずかしいことなんて無理です!」


三木と望月が揉め始めた。不味いな。このままではエジンがドヤるだけだ。それは避けたい。


「望月!三木の鼻を触るんだ!!」


「ん、なんでだ!?」

「やめてください!」


「負けたくなければやれ!やるんだ!!」


「分かった!!」


望月が三木の鼻を右手で掴み、指を鼻の穴に入れた。そこまでやれとは言ってないが、まあいい。


「ぉぉぉおおおぉぉ!」


三木の身体が蒼い光に包まれる。これはやり過ぎたか。


「ぉぉぉおおおおおおおおぉぉ!!!!」


羞恥心が臨界したのか。ドーム状の盾が三木達を覆い、そこが爆心地であるかのように触れるもの全てを吹き飛ばした。エジンの姿すらない。野次馬達も顔色を変えて逃げ出す。


「ボス、やばいですよ!完全に覚醒してます!!」


富沢が狼狽える。盾はどんどん大きくなり、リリパット達の住居まで吹き飛び始めた。流石にまずい。


「富沢!ジメリを連れて来い!!」


羞恥と孤独の戦いだ。

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