第15話 敵襲
「えっ」
なにこれ!完全に囲まれてる。寝ぼけてても【索敵】は嘘をつかない。
「ケイン、起きて!」
「……どうした」
どんなに疲れていてもすぐに目を覚ますのが冒険者というもの。ケインはすぐに上半身を起こしてテントの外の様子を窺った。
「随分と静かだ」
「キャンプ地がまるっと囲まれてるの」
「……冗談ではなさそうだな。夜番の奴等は気付いてないのか?」
「気付いてないと思う。気配が薄い」
「待ってろ。話してくる」
「私も行くよ。私が言った方が説得力あるし」
なんせレベッカちゃんは【索敵】持ちとして有名なのだ。
「わかった。行くぞ」
手早く身支度を終えたケインはテントの入り口をめくって外に出た。私も続く。
【索敵】
気配がさっきよりも強い!なのに、すぐ近くにいる夜番の男はボケーっと突っ立っている。引っ叩いてやりたい!
「おい、敵襲の可能性がある。今すぐ団長に知らせろ」
「おいおい。こんな静かな夜に何言ってんだ?」
こいつむかつく!
「いいから伝えてきて!完全に囲まれてるんだから!」
「夜中に大声を……」
ヒュン
何かが目の前を通り過ぎる。ケインがぐっと私の身体を引き寄せた。
「敵襲だああああ!!」
ケインが大声を上げると同時に幾つもの矢が地面に刺さった。次々とテントから人が飛び出し、各々で臨戦態勢に入る。ケインも【硬化】を発動させて飛んでくる矢を剣で打ち払った。
「ガハハハハッ!やっと面白くなって来たな。随分と退屈したぞ!」
松明が大男を照らした。征南道護衛団の団長、"力の神様の加護"を持つビガロだ。私達冒険者のボスでもある。
「団長、キャンプがまるっと囲まれてるの!!どーしよ?」
「そう来たか!一度、第二キャンプまで撤退する!工夫達を起こして支度させろ!冒険者と俺が先駆け、団員が殿だ!意地でも工夫を守れよ!」
団長が楽しそうに指示を出し、皆が動き始めた。
「レベッカ!【索敵】で敵が薄い方向を探れ!」
「うーん、あっち!」
「よし!冒険者ども!死ぬ気でついて来い!」
団長の喝に30人ほどの冒険者が応えた。こんなところで死んでなるもんか!ケインを見ると、大丈夫!って顔を私に向けた。きっとなんとかなる。
撤退戦が始まった。
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