第77話 羞恥
「三木はなんの神様から加護を?」
ソファーに浅く腰を掛けた三木はさっきまでの浮ついた表情から一変して真剣だ。
「羞恥の神様からです」
「どんな特殊能力がある?」
「恥ずかしさを盾に変えることが出来ます」
「恥ずかしさを?」
「ええ。恥ずかしい気持ちが強い程、味方に強力な盾が形成されるんです。この加護の力で私はタンクとしてトップエクスプローラーの地位を掴んだんのですが……」
三木が苦悶の表情を浮かべる。
「何か問題が?」
「はい。最近、どんな格好をしていても、恥ずかしくないんです!むしろちょっと高揚感を感じるぐらいで、加護の力もどんどん弱まっていて」
こ、こいつ人前で何を言ってるんだ。恥ずかしくないのか?いや、恥ずかしくないんだったな。
夏目がいないことが分かってからつまらなそうにしている望月に話をふる。
「三木の加護の盾ってのはそんなにダンジョン攻略において重要なのか?」
「ああ、重要だな。ダンジョンの最深部ってのは本当にどっからでもモンスターがわいてくるし、遠距離からもバンバン狙われるんだ。それを三木の盾は自動で防いでくれていた。しかも味方全員をだ」
「今は?」
「すぐに盾が壊れてしまってな。第20階層の攻略は一旦、中断している」
望月の言葉に三木が俯く。それほどまでに三木に依存しているのはどうかと思うが、急造のチームでは仕方がないのかもしれない。
「根岸さんはエクスプローラーの様々な悩みを解消するスキルをお持ちだと聞いています!どうか私に羞恥心を取り戻させてください!」
こいつがどんな変態だとしても、新宿ダンジョンの攻略が止まっているのは問題だ。
「話はわかった。いくつか条件はあるが、出来る限り協力しよう」
「本当ですか!ありがとうございます!で、私はどんな格好をすればいいですか?」
「……いや、とりあえず格好はそのままでいい」
俺の言葉を聞いて三木の表情が曇る。これは重症だ。羞恥心のカケラもない。俺はマジックポーチから開心剣を取り出して、応接テーブルの上に置いた。
「今からお前の深層を見せてもらう。この剣の先に指を滑らせろ」
「……はい。よろしくお願いします」
三木の記憶が流れ込んできた。
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