第39話 ついに魔剣

鑑定の結果、俺が手に入れた魔剣に込められたスキルが判明した。そのスキルは【開心】だ。


【開心】とは相手の記憶や心を読み取るスキルらしい。その【開心】のスキルが込められた魔剣、長いので開心剣としよう、はその剣身で傷をつけた相手の記憶や心を読み取れるというのだ。


「で、和久津。斬られてみたいよな?」


「なわけないっしょ!」


「五条は?」


「む、無理です!」


「はぁぁ」


「「なんで溜息!!」」


ファミレスで俺の向かいに座る2人はなかなか息があっている様子だ。


「和久津は自分の伝えたいことが相手に伝わらなかったことはないのか?」


「……それはありますけど」


「この剣で斬られるってことはその溝を埋めるってことだ」


「えっ」


「全ての争い事はコミュニケーションの不完全さから生まれるんだ。それを解決する術がここにはある」


「いや、でもですね、」


「では五条。お前は今、何を思っている」


「……えっ、いや、あの、もう帰りたいって」


「だが、その気持ちが本当かどうかは俺には分からないし伝わらない」


「……ほ、本当に帰りたいんです」


「その、帰りたいって気持ちをダイレクトに伝える手段がこの剣なんだ」


横を通った店員が開心剣を見てギョッとしていた。エクスプローラーが武器を持ち歩くのは認められているが、こんな凶々しい剣はそうない。驚いて当然だ。


「では、視点を変えてみよう。2人は占いを気にする方か?」


「自分は全く気にしないっすねー」


「私は占い好きです。結構気にします」


「五条。占い師に過去の自分についてズバリ言い当てられると何か満たされる気持ちになったことはないか?」


「……満たされる?」


「そう。自分では漠然としか認識していない自分について、ずばり指摘されることで満足したことはないか?」


「……あるかもしれません」


「この剣によって俺はお前の過去の記憶や気持ちを知ることが出来るだろう。そして、まさに客観的な視点から五条美里という人間の特徴や傾向を伝えることが可能になる。もちろん、それを踏まえて今後についてアドバイスをすることも」


「私という人間についてですか?」


「そうだ。自分を知りたくないのか?」


ふむ。これはいけるな。五条は落ちた。


「あの、指の先をちょっと傷付けるだけでも大丈夫なんですかね?」


「わからん」


「ご、五条さん!そんなに帰りたいんですか?」


「それもありますけど、よくよく考えればちょっと面白いかな?って」


「流石だ。たかが占いぐらいの感覚でやってみよう。俺が剣を握っているから、軽く指を当ててみてくれ」


「……はい」


「えー!えー!」


「ヘタレは黙ってろ」


「……」


「よし、いくぞ!」


「は、はい!」


五条が開心剣の剣先に指を滑らせた。

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