第15話 モンスターハウスの憂鬱
サクッと第3階層を攻略し、俺は第4階層に到達している。
今日はモンスターハウスを攻略する予定だ。その準備の為に荷物が大変なことになっている。
途中すれ違ったエクスプローラーに奇異の目で見られたが、これからのことを想像すると全く気にならなかった。我が道を進めばいい。
それまではポツポツとエクスプローラーとすれ違っていたが、モンスターハウスの近くになると誰もいなくなった。
第6階層以降のモンスターハウスはモンスターを全滅させると宝箱が現れるそうだが、第4、5階層ではそれがない。ただモンスターに囲まれるだけで旨味がないのだ。誰も来ない筈だ。お陰で俺は仕事がやり易い。
マップを確認する。モンスターハウスで間違いない。まだ開いている入り口から中を覗くが、今のところ空っぽだ。
俺はポーチから召喚オーブを取り出し、ゴブ、ゴビ、ゴバを召喚する。3体呼び出すと一気に力が抜けるが、数分待てば大丈夫だ。普通に動けるようになる。
「よし、モンスターハウスに入るぞ!」
「「「ギギギ!」」」
ゴブを先頭にしてモンスターハウスに入ると、壁が動いて退路が絶たれた。完全な密室だ。
少しすると前面の壁に四箇所、亀裂が入って脈動を始めた。
「よし!戻れ!」
俺は慌てて召喚オーブに念じてゴブ、ゴビ、ゴバをオーブに戻した。そして壁の前に特大のクーラーボックスを置き、蓋を開ける。
「ふー」
息を吐いて呼吸を整え、酸素ボンベに繋がったマスクを装着。呼吸に問題ないのを確認してからペットボトルの水をクーラーボックスに一気に注いだ。
ボフン
ドライアイスが一気に気化してモンスターハウスに広がった。まだクーラーボックスの中にはドライアイスが残っている。水を更に追加する。
ボフン
水を更に追加する。
ボフン
その時だ。壁の脈動が更に激しくなり、4つの亀裂が大きく開き、何かが出てくる。
「「「「オエー!」」」」
壁から出てきたコボルト4体は苦しそうに喉を押さえ、そのまま地面に崩れ落ちる。二酸化炭素は下に溜まりやすいので、一気に中毒症状が進む筈だ。
「「「「オエー!」」」」
次に壁から出てきた4体がさっきと全く同じように声を上げ、全く同じように地面に伏す。
最初のコボルト4体は既に死んで煙になっている。
「「「「オエー!」」」」
次のコボルトが出てきて、崩れ落ち、煙になる。
「「「「オエー!」」」」
「「「「オエー!」」」」
「「「「オエー!」」」」
「「「「オエー!」」」」
「「「「オエー!」」」」
「「「「オエー!」」」」
「「「「オエー!」」」」
ちょうど10回コボルトの声が響き、静寂が訪れた。
########
俺は空になった特大クーラーボックスのなかにコバルトの結晶を入れ、軽い足取りで転移石に向かっている。かつてないほどの美しい勝利に酔いしれている。
実入りも素晴らしい。このコバルト結晶を売れば300万近くになる筈だ。初級ポーションと違い、コバルトは幾ら売っても値崩れの恐れがないのが素晴らしい。
しばらくはこの「勝手にコバルト大作戦」で荒稼ぎして、第5階層に備えることにしよう。
第5階層のフロアボスからはレアなスキルオーブをドロップさせなければならない。それにはとびきりの性悪ムーブが必要な筈だ。金はいくらあっても足りない。足りないのだ。
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