第44話 そして闘いは

《ガァァァァァァァァ!?》


 ゴーレムはたたらを踏んで、跪く。胴にはぽっかりと穴が開いたままだ。


「やったか!?」


「あっ、海斗! そういうこと言っちゃ駄目だから!?」


 すると、ゴーレムに空いた穴が、どんどん小さくなっていく。周りから凍っていって、自動的に回復しているようだ。


 弥生は歯を食いしばりながら、連射を続ける。



《Canon, Canon, Canon!》



 ……と、そのうちの一発が、手がかりをつかむ。


「あ! 見てください! ゴーレムの内部になにかあります!」


 目を向けてみると、ゴーレムの右肩に空いた穴から、大きな赤い球が覗いていた。


「あれがゴーレムの核よ! あれを壊せば……!」


 弥生は巧みなコントローラー捌きで照準を合わせ──


「いっけぇぇぇぇぇぇえ!」


 弥生の叫びと共に、光の束が発射される!



《Canon!》



 放たれた光線は、確かにゴーレムの右肩を貫通した。


《ガラララ……ガァァ……!》


 今度こそゴーレムは膝から崩れ、光に包まれて……消えた。


 ダンジョンボス、【メガアイスゴーレム】を倒した!



『べべべ! ダンジョンボスを倒したべふぅ』



 ……ほっ、と胸をなでおろす弥生。


 そこに海斗が駆けつける。


「弥生、なんか最高に凄かったぞ!」


「語彙力の低さが垣間見えるコメントね……」


 苦笑いしながらも「ありがと」と言う。



『報酬に、無限ポイントをくれてやるべふぃ』



 ウィン、といって表示された数字が、みるみるうちに増えていって、『∞』と表記

された。



『出口を開放するべふぁっふぁ』



 海斗たちが入ってきた扉と反対側の壁が光に変わり、オーロラのように弛み始めた。恐らく、あそこを潜れば元の世界に戻れるのだろう。


「……やっと帰れるのね」


 弥生は遠い目をして、言う。


「そうだな」


 このサバイバルが終わりを告げ、脳裏には様々な出来事が蘇る。


 ──でも、こびりついて離れない、最悪な記憶が。


「椿さん……」


 睦美が椿の近くに行き、その骸を泣きそうな目で見つめ、手を合わせる。


 海斗と弥生もそれに倣って黙祷した。


「……なんで、なんで死んだのよ……」


 弥生の頬に、一筋の涙。


「生き返りなさいよ……」


 やがて涙は大粒になり、ポロポロと零れ落ちていく。


 ──と。


《ウィン》



『ポイントを消費して【蘇生アイテム】を購入しますか?』



 その場の全員が目を見開く。


 ポチっ。小気味のいい音が、響いた。

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