第8話 真実

 僕はアユムを連れて、例の建物があった場所に行ってみた。


そこには、公園のようなものがあった。


「これだ!僕の記憶は当たってたんだ」


僕は喜びを感じた。


それと同時に不安も少し感じた。


小さい頃、その中に入ってみたら、なんともいえない不気味なものを感じたからだ。


それは言葉で言い表すにはとても難しかった。


僕は勇気を出して、中に入ってみた。


アユムは少し怖がっているような素振りを見せた。


僕は違和感を感じた。


なぜなら、太陽の少女はとてもノリが良く、何事にも勇気を出して挑戦するからだ。


その公園のようなものは地下につながっていた。


地下に行ってみた。


そこには夢魔という漢字が書かれている建物があった。


「やっぱり!」


僕は一気に思い出した。


僕は夢魔と書かれた建物の中で様々な世界の映像を見た。


その映像に出てくる世界はこの世界に似ているけど、どこかが少し違っていた。


映像は周りを走り回るかのように映し出されていた。


「いろいろなパラレルワールドを見せられていたのか」


パラレルワールドに関する手がかりはここにある、僕はそう確信した。


どことなく薄暗い建物の中を進んでいった。


すると、駅のようなものが広がっていた。


「なんだここは?」


「とても不思議な所だね」


「よし、これでパラレルワールドへの行き方が分かるかも」


「パラレルワールドに行くのはやめといた方が良いよ」


「えっ」


「もし君がパラレルワールドに行ってしまうと戻ってこれなくなるかもしれないし、下手したら君自身、この世界そのものが消えてしまうかもしれない」


彼女は真剣そうに言った。


「それは違うと思う。僕らは日々生きている中で無意識のうちにパラレルワールドを創り出し、そこに移動している。僕らはそれをずっと延々と繰り返している。だから、大丈夫だと思う」


「なるほど、なるほど」


彼女は興味深そうにうなづいていた。


「それに君は嘘をついている!」


「それどういうこと?」


彼女は笑った。


「君は太陽の少女じゃない。君は太陽じゃない。君からは太陽の匂いを一切、感じないんだ」


彼女はさらにおかしそうに笑った。


「よく気がついたわね」


彼女はフッと笑った。


周りの光景が変わった。


夕暮れのようなものに変わった。


そして、ある匂いがフワッと湧き上がった。


蛾の匂いだ。


「君は何者なんだ?」


「私は迷夢(メイム)」


「メイム、それが君の名前?」


「私そのものが迷夢(メイム)。私は夢魔(ムーマ)によって創られた魂」


「なっ、なんかよく分からないけど、なんで僕を騙したんだ?」


「君にこの世界を出てほしくないから」


「なんで?」


「私はずっとあなたのことが好きだったの」


「ずっと?それってどういうこと?」


「あなたが赤ちゃんだった頃からずっとあなたのことを見てきたの」


「君って、なんなんだ?」


「私はこの世界そのもの」


「ってことは今まで僕が見てきたものは君自身ってことか」


「正解」


「君こそ、なんで太陽の少女にこだわるの?」


「好きだから!」


「そんな妄想のようなものにしがみつくのは良くないと思うけど」


彼女は嫌らしく笑った。


「僕はこの世界とずっと向き合っていきたい、愛する家族とずっと仲良くしたい、君のことを全力で愛したい。だから、太陽の少女は存在するのか、太陽の少女はもう一つの君なのかどうかを確かめたいんだ!」


「じゃあ、行ってらっしゃい」


「もしかして、パラレルワールドへの行き方を知ってるのか?」


「うん」


すると、どこからともなく怪しそうな人がわんさかわんさかとやってきた。


彼らはここから先へは行かさんぞと言わんばかりに行く手を阻んだ。


「大丈夫、心配しないで」


「なにか策があるの?」


「重力を作れば良いわ」


「どっ、どうやって?」


「想像すればできる」


僕はやるだけやってみた。


すると、体が宙に浮くような感じがした。


そして、怪しい連中は弾き飛ばされた。


「すっ、すげぇ!マジかよ」


僕は地面に降り立った。


気がつくと怪しい連中は消えていた。


彼女はパラレルワールドに行ける乗り物がある場所を教えてくれた。


「ありがとう」


「どういたしまして」


僕はこの世界の家族に電話をかけた。


「もしもし」


「はぁ〜い」


「馬鹿みたいな話だけどパラレルワールドに行こうと思うんだ」


「ふぅ〜ん、行ってらっしゃい」


どこかぼんやりとしていた。


「ところで、夢魔(ムーマ)って一体、なんなの?夢魔(ムーマ)の目的はなんなの?」


「夢魔(ムーマ)の正体は言えない。でも、夢魔(ムーマ)の目的なら少しだけ教えてあげる。夢魔(ムーマ)はこの世界を鮮明にしたい。だから、君のように生き生きとした人間を必要としている」


「何が何だかさっぱりだけど、夢魔(ムーマ)はこの世界の神様って感じなの?」


「ええ、そうよ」


「この世界には君のような人間が何人かいるの。それでだいぶ鮮明になってきたけれど。でも、めったに夢魔(ムーマ)に出会うことはないし、接触するのはとてつもなく難しい。まあ、ツバサっていう女の子は夢魔(ムーマ)にアクセスしたことがあるけどね」


「僕は今までこの世界に閉じ込められていたってこと?」


「うん、いろいろと酷いことばかりして、本当にごめんなさい」


「いっ、いやっ、大丈夫だよ」


僕は教えてもらった場所に行き、パラレルワールドに行くための乗り物に乗った。


僕は教えてもらった通りに操縦した。


すると、あたりが少しずつぼやけていくような感じがした。


そして、体が少しずつ重くなっていくような感じがした。


とても動きづらかった。


僕は一心不乱に動いてみた。


妙な明るさが僕を包む。


そのような感じがした。



 気がつくと、僕はある場所に横たわっていた。


周りを見てみると、よく分からない機械に囲まれていた。


「着いたのかな?」

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