第3話 鮮やか
耳元で誰かが囁いている。
そんな気がした。
とても温かい。
面白かったこと、嬉しかったこと、楽しかったこと、思い出に残ったことを囁いていた。
そんな気がする。
ひとつだけ分かりそうなことがある。
その声はとてつもなく優しくて、なめらかだった。
その声はとても可愛かった。
その声はとても愉快だった。
聞いているだけでとても幸せになった。
誰が話しているかは分からなかった。
だけど、なんか自然とうっとりとした気分になった。
ハッと目が覚めた。
いつも見慣れている景色が周りに広がっていた。
「あれは夢か」
夢にしてはどこかはっきりとしていた。
夢にしては温かみがあった。
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