第2話 存在しない現実

 僕は悩んでいた。


僕は考え込んでいた。


この世界は何なのか?


太陽の少女はどこにいるのか?


太陽の少女は何者なのか?



 太陽の少女はうっすらとした僕の記憶の中にいた。


彼女は優しく僕に微笑んだ。


僕は何日も部屋で考え込んでいた。


僕は様々な線を考えた。


その中には前世の記憶というものがあった。


しかし、前世の記憶ではない。


前世の記憶にしてはあまりにもはっきりしている。


それはぼんやりとしているものの家族四人で暮らしているというものだった。


そこには父さん、母さん、僕、妹で海へ行って遊ぶといった光景があった。


そこには太陽の少女と迷路の中を走り回り、ゴールを見つけて大喜びするといった光景があった。


父さんと母さんはとても優しかった。


妹はなんやかんやでとても優しく天使のような可愛さを持っていた。


太陽の少女はいつも活発でよくはしゃぎ回っていた。


僕は太陽の少女と一緒にいろいろな所へ遊びに行った。


虫を観察しに行ったり、山に登ったり、海や川へ泳ぎに行って、たくさん遊んだ。


太陽の少女はとてもひょうきんだった。


太陽の少女はいつも周りを笑顔にしてくれた。


太陽の少女はとても優しく、いつも周りを明るくしてくれた。


太陽の少女はいつも周りを元気にしてくれた。


太陽の少女と過ごした時間は言葉では言い表せないほど楽しかった。


僕はとても幸せだった。


それはぼんやりとしていたが、はっきりと感じとることができた。


それはうっすらとしていたが、みんなと過ごした日々、みんなと触れ合えた喜び、はつらつとした青空、包み込むような優しさを持つ不思議な夜空、温かな光、温かな風景、溢れんばかりの笑顔、とてつもなく爽やかな風、ありとあらゆるものが放つとても香ばしい匂いでできていた。


どれも魅力に満ち溢れていた。


ありとあらゆるものが生き生きとしていた。


それは全て光り輝いていた。


しかし、それは存在しない。


この世界には存在しない。


太陽の少女は今でも微笑んでいる。


太陽の少女は元気に走り回っている。


僕はその温かみを感じている。


しかし、それはどこにもない。


どこにも存在しない。


妄想なのか、いや、妄想ではない。



 この世界にいる両親は奇妙奇天烈なことでいつも悩んでいる僕を心配していた。


心配しているというより心配している素振りを見せているといった方が良いのかもしれない。


「なぁ、サトル。前世だの、パラレルワールドだのなんだの趣味に没頭するのも良いが、ほどほどにしないとな」


「うん、分かってるよ。だけど、なんていうか、その」


「まあ、趣味があるっていうのは良いことだと思うし、自分の趣味を全力で追求するのは素晴らしいと思うが、もっと他のことにも目を向けないとなぁ」


「でも、どうしても気になるんだ」


「そんなに気になるの?まあ、いいけど」


両親は穏やかに接してくれた。


しかし、そこには魂がなかった。


心と心をぶつけ合うことがなかった。


心と心の触れ合いがなかった。


それはどこかぼんやりとしていた。


妹も僕のことを心配してくれた。


しかし、どこかぼんやりとしていた。


僕は母の指摘を受けて、太陽の少女は妹ではないかという線も考えた。


しかし、僕の記憶の中にいる太陽の少女は妹ではなかった。


確かに僕は幼い頃、妹とよく遊んでいた。


ところが、この世界の妹はどこか大人しかった。


この現実世界で一緒に過ごしてきた妹はとても優しい。


しかし、はつらつとしてなかった。


それに対し、太陽の少女はとてもはつらつとしていた。


特にイタズラを仕掛ける時はとてつもなくはつらつとしていた。


その少女はとてつもなく輝いていた。


言葉では言い表せないほど輝いていた。


無邪気な笑顔、優しい声、軽やかな動き、爽やかなしぐさ。


たちまち癒されてしまう。


悔しいという気持ちになると同時に幸せという名の感情が溢れるように湧き出てくる。


それは悔しい気持ちを一気に打ち消した。


全てが嬉しさに満ち溢れていた。


全てが喜びに満ち溢れていた。


全てが幸せに満ち溢れていた。


全てが愛に満ち溢れていた。


何もかもが愛おしかった。



 結局、何も答えは出なかった。


この世界の父はそんな僕を察した。


「サトル、最近、なんか疲れてるんじゃないか?」


「うん、ちょっと」


「たまには気分転換もしたほうが良いぞ。そうだ、今度の休みは久々に遊園地にでも行くか」


「うん、いいよ」


僕は小さい頃、よく遊んだ遊園地に行った。


見慣れているはずなのにどこか違和感を感じた。


この世界の遊園地はやっぱりぼんやりとしていた。


この世界はどこかぼんやりとしていた。























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