第8話 パーティー結成
「おっと、これはお恥ずかしいところをお見せしてしまいました。どうにも召喚魔法のこと、さらには長年追い求めていた『生物召喚』のこととなると興奮してしまって……」
俺が二人の神獣を呼び出し巨大狼を撃破したら、それを見ていた女性、雷剣エレンディアさんという女性に研究対象にされそうになった。
ネイシアが剣に魔力を込め女性を制してくれて助かった……。
「いえいえ、いいんですよ。さて、では私たちはもう行きますので、お忙しいエレンディアさんはどうぞ王都にお戻りくださいね、ふふ」
「……はは、先程も言いましたが、王都での仕事は全てキャンセルしてきました。しばらくはフリーの身でして、この国の未来を担うネイシア様をさすがに御一人では行かせられませんね」
ネイシアがニッコリ微笑み俺の右腕を掴んでくるが、これまたニッコリ笑顔のエレンディアさんが逃すまい、と俺の左腕をつかんでくる。
え、何この状況……。
「ふふ、私の身を案じて下さるのは嬉しいのですが、どうして私のシロウを掴むのでしょう」
「いやぁ、私のような下々の者がネイシア様の御身に触れるなど恐れ多くて。この少年は確かに逸材です、しかしまだ駆け出し召喚士。シロウには優秀な指導者が必要なんだと思います。そしてその適任者はネイシア様ではなく最強の召喚士と呼ばれるこの私かと、はは」
二人がニコニコと睨み合う。
あの、俺の腕をつかむ握力数値がグイグイ上昇していって痛いんですが……。
ネイシアは俺の才能を見抜き、ポンと一万G、日本感覚だと百万円を出してくれた恩人。そして俺はまだその値段分の護衛のお仕事をこなしていない。
エレンディアさんは世界最強と名高い召喚士様で、駆け出し召喚士の俺としては有名なベテランさんに指導を受けられるのなら、そのチャンスは逃せない。
……が、なんにせよ、今は夜の暗い森の街道。
細かな話は街に着いてからでもいいだろう。
さっきだって狼に襲われたばかりなんだ、揉めていないでさっさと移動をしたほうがいい。
「あ、あの……! 色々事情はあるのでしょうが、とりあえず安全な街まで移動をするのが最優先かと思います……。なので今はそれぞれの抱える身分や職業は考えず、生き残るために三人で力を合わせましょう!」
俺がずばっと街があるであろう方向を指す。
「ふふ、さっすがシロウ。決断出来る人って私好きだな。つまりシロウは自分のパーティーに私を誘っているってことでしょ? いいよ、シロウとなら楽しい冒険が出来そうだし」
「おっと、少年に諭されるとは私もまだまだか。身分や職業を考えず、生き残るためのパーティー……うん、いいだろう。ようするに君は、職業差やつまらない年齢差を気にしないパーティーを立ち上げるから私に入れと。いいぞ、千年前に途絶えた技術『生物召喚』その使い手の誘いとあれば乗るに決まっている。というかすでに君は私の研究対象下でな……逃がすわけがない、はは」
……俺のパーティー? いやそういうのじゃなくて、早く移動しましょうって提案ですが。
「お金でシロウを護衛に雇いはしたけどさ、その決断力と神獣召喚の実力を考えたらシロウがパーティーのリーダーに適任だと思うんだ。ふふ、私生まれて初めてパーティーに誘われちゃった」
「……正直な話、格として適任なのはネイシア様なのですが、あまり表沙汰に出来ない事情を考えると、ネイシア様が認めた人物であるシロウがいいかと。そしてこのエレンディア=エルン、レインシア王国に身を置く者としてネイシア様をお守りするのは当然。君がネイシア様を含むパーティーを立ち上げるというのなら、私は喜んで参加しよう」
……ん?
揉め事を収めようとしただけなんだが、いつのまにか俺をリーダーとしたパーティーが出来上がったぞ……。
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