第3話 スタバ
晩ごはんは夏野菜のカレーにしました。ナスと玉ねぎと鶏肉のシンプル具材にトマトを加えてさっぱりめに仕上げました。サラダはレタスをちぎってトマトと温泉卵をのせてシーザードレッシングをかけました。麦茶は冷蔵庫に常備してあります。彼はおかわりをして、カレー鍋はすっかり空になりました。彼はおいしいと言っています、嬉しいです。
私は食後にパソコンに向かいます。恒例のSNSチェックをまだやっていませんでした。彼はテレビを見ています。こんな風に家のなかでもお互いの時間を尊重するっていい関係だなと、改めて思いました。
待ちに待った祝日、三連休です。今日は買い物に行こうと前から決めていました。
お気に入りの服屋に夏物を買いに行きます。先月のクリアランスセールから時間は経っているけれども、祝日なのでセールをやっているかもしれないです。
私のお気に入りの服屋は、車で四十分ほど走ったところにある隣町の百貨店のテナントに入っています。車内ではどんな服を買おうかなとか、昨日のテレビが面白かったとか、他愛ないお喋りが続きます。
百貨店に到着したら屋内駐車場が埋まっていました。運よくひとつ空いていたのでそこに駐車しました。車からおりるともわっとした熱気がやってきました。今まで車のクーラーを浴びていたので、外気はより暑く感じます。
駐車場内は排気ガスと夏日の気温でかなり温度が上昇していると思われます。けれども屋内なだけ、まだましでしょうか。屋外に停めたら直射日光を浴びるし紫外線も浴びてしまいます。屋内に停められて、ラッキーです。
百貨店に入るとすぐに涼しくなり快適です。エスカレーターに乗ってお目当ての服屋を目指します。やっぱりセール開催中でした、ラッキー。
値下げされた文字が大きく表示してあります。なにを買おう。夏は暑いからあんまり凝った服は着たくないんだけれどおしゃれは愉しみたいです。
こないだ美春が着ていたワンピース可愛かったな。でも似たような服を買うと絶対まねしたって思われるから買わないでおこうと思います。
いつだったか好きな音楽家がライブで着ていた衣装に似たセットアップがありました。開襟シャツに短パン。地球みたいな色でデザインも宇宙ぽいです。かっこいい。
でもいつ着よう? うーん、今度彼に会うときかな? どうしましょう。値下げしているけれどそこまで安くはなっていません。いや、値段じゃないです。このセットアップはかっこいい、着たい。友達も「これを逃したらきっともう出会えない」と言っています。
試着をしたらサイズがぴったりだったので購入を決めました。友達も「とっても似合うよ」と言ってくれました。
はあ、いい買い物をしました。ものすごく満足です。友達はもう帰ると言っているので一人でお茶することにしました。この百貨店にはテナントでスターバックスが入っています。スタバを目指してさらにエレベーターで上の階へ上がります。
スタバは相変わらず行列ができていたけれどもたいていの人はフラペチーノを頼んでいたのでスムーズに列が進みます。テイクアウトも多いようで席は
私はイートインでデカフェのホットコーヒーとチョコスコーンを注文しました。
窓際の席は日焼けしそうなので入り口付近の席に座りました。ここなら誰か来たときに気づけると思うからです。もしかして知っている顔が来るかもしれないのです。
「わざわざカフェインを抜いてまでコーヒー飲む意味が分からない」
誰かが以前、そう言っていた気がします。デカフェを頼んだらいつもその言葉を思い出します。ちょっとしたギャグでしょうか。
スマホを見ながらコーヒーをすすります。あぢいっ、なんて言わないように気をつけて。誰かに見られるかもしれないので、優雅な動作を心がけます。
スコーンには本当はかじりつきたいけれど、フォークがついてきたのでフォークを刺します。三角の先端を切ります。ぽろぽろと生地がくずれます。もったいない、かじりつくと生地くずれは最小限ですむのに。そんなことは顔にはださずにスコーンを口に運びます。ああおいしい。スコーンの生地自体は味はしないんだけれどチョコがおいしいです。だからといって板チョコレートを食べるのは違うんです。
「雪子さん」
コーヒーをもう少し冷まそうと思っていたら名前を呼ばれました。彼です。「どうしたの?」お互いに同じ言葉を発します。
「僕はちょっと買い物に。雪子さん、ご一緒してもいいかな?」
私はもちろんと言いました。彼は注文と会計をすませて、トレイに商品を載せて私の向かいに座りました。彼のトレイにはアイスコーヒーとシフォンケーキが載っていました。
彼は私の横にある買い物袋を見て「なに買ったの」と聞きました。お気に入りの服屋があるので夏服を買ったと言いました。彼はそっか、とだけ言います。きっと今後のデートで着てくるのだと思っているのでしょうか。
彼は今日も私のアパートに来たいと言いました。今夜は泊まりたいと言われました。彼の家はこの町なので、今日はバスで来たと言っています。このまま私のアパートに行けると言っています。
私が「着替えは?」と聞くと途中にあるユニクロで買っていくと返ってきました。そうですか、そのようなノリですか。
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