(掌編)まっすぐに見えていた

こうえつ

掌編 まっすぐに見えていた

夏。

恋をした。

私の心は秋には完熟した。

幸せなどという言葉ではなく、私の恋は、世界のすべてだった。


秋冬。

熱狂的な恋は秋を迎え冬になり温度が気温ともに下がり始める。

私は終わりそうな恋を見つめるために、ここで冬の海を見ている。


空は灰色の厚い雲で目の前の海は荒々しく、二人の夏の思いでなど砕いていく。

私には言葉も感想も持たせない、冬の海の波動。

すぐ先さえ、見通せない海に、不安が心を支配していく。


春。

 好きな人は私のそばからいなくなった。

 苦しい、心が裂けそうだった。

 また、もう一度、海を見に来た。


 激しい冬の海はどこかに消え去り、雲は動き出して、空から降る小明。

 そして見えなかった海の先が、まっすぐに見えていた。

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(掌編)まっすぐに見えていた こうえつ @pancoo

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