短編

Strong Forest

1 浜辺

 ただ君を見ていた。

 君は海を見ていた。

 青い波が寄せては返す。


 浜辺で子供たちが走り回っている。

 僕も子供たちに混じってはしゃぎまわった。

 君は笑っていた。

 サマーベッドに寝転がって一緒に青空を見上げた。意味もなく笑い合ったね。


 誰もいない浜辺に僕一人。

 あれからどれくらいの時が流れただろう。

 僕はもう覚えていない。

 無人の浜辺。

 さざ波の音がどこまでも響いている。


「なにしてるの」

 不意の呼びかけに後ろを振り返ると、白いワンピースを着た小さな女の子が、両手に麦わら帽子を抱え立っていた。


 女の子は僕の隣に座った。

「私、覚えているよ。ちゃんと」

「そうか。成功したんだね」

 女の子は嬉しそうに頷いた。

 白衣の男と女が何人かやって来て僕たちに近づいた。

「私、帰らなくちゃ」

 女の子の後ろ姿が小さくなっていく。街の中にその姿は消えた。


 あの日、君を失った。もう二度と戻らない君。

 必ず迎えに来る。君が大人になったら。それまで僕は待っている

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