Roundtable * Ⅳ

「そうか……。私は、そう簡単には決断できないな……。より大きな破滅が訪れる可能性があると思うと、やはり……」

 ベディヴィアは不安そうな顔をして、チラリと別の席を見た。彼の視線の先には、白い髪を編み込んだトリスタンの姿が。

「ベディヴィア卿の不安は尤もです。ここは一度、静観した方がよろしいかと」

「ふむ。つまり様子見か」

「はい。その者の経験した蝶の羽ばたきなど、私たちの経験したものとは比べ物にならないほど、非常に些末なものだと思います。むやみに円卓に招いては、大事故を引き起こしかねますので」

 トリスタンは静かに首を傾け、そのままモードレッドに視線を送った。茶菓子を口に頬張る彼に対して、無言で意見を求める。

「別に私は、どちらでも構わない。蝶がどう羽ばたこうが、やることをやるだけだろ」

 彼はあまり興味がないといった様子で、小さく首をすくめた。そのままの動作で蝶を召喚し、ベディヴィアの前にあった手のつけられていない菓子を奪い取る。

「静観派が数人いるとなると、むやみに盤上を動かすことはできないな。ここはもう一度、同士の動向を見守ることにしよう。もちろん、我々の物語の片手間にな」

「全く、アーサー様は残酷なことをおっしゃる。つまり私たちの気が済むまで、その者は絶望に溺れ続けなくてはならないのだな」

 ランスロットの言葉に、ガウェインとトリスタンは静かに笑みを零した。人々の知らないところで、円卓の騎士は何度も同じ輪廻を繰り返し、そして望む者に対しても何度も同じ輪廻を与え続けた。それこそ永遠に、終わることなく。

「ランスロット、これのどこが残酷なのだ? 同士は輪廻を自覚せずに済むのだから、我々よりも遥かに楽であろう?」

 そう反論するアーサーも、零れる笑みを抑え切れない。同じ不幸を味わう者。それは極上の蜜に等しい。

「では、今ここに告げる。我々円卓の騎士は、蝶の羽ばたきに陥った同士を静観し、我々の結末の糧をすることを!」

 アーサーの宣言と共に、優雅な蝶が一斉に円卓に舞い上がった。まるで同士の出現を歓迎するように、篠田の逃れられない絶望を肯定するように、不気味なほど美しく飛び立った。

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