Butterfly's route * Lancelot

 次の日、見事なまでに寝坊した俺は、二限ギリギリの時間の電車に乗り込んだ。すぐ後ろで閉まるドアを感じながら、ようやくほっと一息つく。

 ……昨日は華菜のせいで、ゲームの話を延々と聞かされた。あのとき、俺がリュックを持っていかなければなぁ……。華菜に取りに来させれば良かった。


「あれー? 篠田君だー!」

 ――座席に目を移すと、俺に向かってひらひらと手を振る清水の姿が。同じサークルの仲間で、今日はハーフアップの髪型に清楚なワンピースを着ている。

「清水、おはよう。いつもこの時間の電車か?」

「うーん、本当は一限があったんだけどねー? 普通に寝坊しましたー!」

「……おい」

 清水のやつ、実はサボり癖がひどい。この間も実習をサボって、大学のカフェに居座ってたらしい。

「だってさー、一限って眠いんだもーん! 一限の講義、この世からなくなんないかなー」

「そんなこと言って、単位は平気なのか?」

「平気平気! ちゃんと計算してるから!」

 計算って、変なところで真面目だな……。清水の家は遠いから、一限がきついってのは理解できなくもないが。

「そんなことより! 篠田君、例の講義のレジュメ見せて!」

「えー、またかよ……」

「お願い! あとでなんか奢るから!」

 その言葉、マジで信用できないんだが……。まぁ、別にいいか。

「ったく、分かったよ……」

「ありがとー! 感謝感謝!」


 ――清水がお礼のポーズを取った途端、その反動でスマホが地面に落ちた。開きっぱなしのSNSの画面が、俺の目の前まで滑ってくる。

「おい、落としたぞ――」

 ――何気なく目に入ったスマホの画面を見た瞬間、背筋が一気に凍りついた。な、何だよ、これ……!? 一体、どういうことだ……!?

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