第8話私のお兄ちゃん
「親友のアンタにだけ言うけどさ、私のお兄ちゃんやっぱ凄いわ」
「何が?」
「だってさあ、アンタも知ってんじゃん。お互いガキの頃からお兄ちゃんと遊んでたんだからさあ、東大卒でさあ、頭キレッキレでさあ、見た目もめっちゃかっこいいののに、どうしようもなく田舎臭いヤンキー女と結婚するんだよ」
「それ、軽くディスッてんじゃん」
「ディスってねーわ。私のお兄ちゃんの優しさに感動してんだわ」
「どういうこと?」
「アンタも知ってると思うけど、私のお兄ちゃんモテ率半端ねーしさ、お嫁さんになりたい人なんて、いーっぱいこの世にいるんだわ。なのにあえて、二人連れのクソガキ連れたバツ2のヤンキー女と結婚するってすごくね?」
「え?」
「しかもさあ、ヤンキー女の娘二人は、すっかり私のお兄ちゃんに心酔しちゃってるみたいだしさ。二回目の旦那なんてヤクザだったらしいし、お兄ちゃん彼女たちの面倒は俺がみるって言って…… 男だわ」
「ええ、それ本当に?」
「アンタも覚えてるでしょ、昔、公園にいた変質者から、お兄ちゃんが守ってくれたこと……」
「うん……あのあと色々あったんだけど……」
「お兄ちゃんは本当に面倒見がいいの。私が学校行くの嫌で嫌で引きこもっていたときも唯一相手してくれたんだもん」
「それって面倒見がいいって言うのかな?」
「もーっ、私のお兄ちゃんは、真面目で几帳面で、思いやりのある人なの。だからヤンキー女が困ってたのを助けてあげたんだよ。自らの人生を犠牲にしてさ……でないとお兄ちゃんがあんなのと結婚なんてするわけないじゃん」
「いや、でも貴方のお兄さん……いや、なんでもない……」
「うちの親はさあ、もう大反対もいいとこ。お兄ちゃんもパパもママもあれだけ喧嘩したのなんて初めてだよ。お兄ちゃんたら結婚できなかったら勘当してくれだなんて言うくらい真剣だったんだから」
「本当に?」
「ね、凄いでしょ。紳士だよね。兄妹として尊敬しちゃう」
「信じられない」
「しかもさ、ヤンキー女とは体の関係も一切ないんだよ。セックスもしたことないって……ただ救いたいから結婚するって……すごくね?」
「嘘でしょう?」
「ホントホント、ワンチャンさあ、ヤンキー女が身体を求めてきたって、お兄ちゃん絶対断ってるよ。あれが夜、パートで出かけてる最中、お兄ちゃんが何も言わずにクソガキの面倒見てるんだよ」
「それってやばくない?」
「クソガキなんて相手しないでいいのに、探検ごっことかで、公園のそばにある廃屋になってる幽霊屋敷みたいなとこに遊びに連れて行ってあげて……そういえば、私とアンタもよくお兄ちゃんと遊びに行ったよね~あの頃は2人とも将来は、お兄ちゃんのお嫁さんになるんだーって言ってたっけ?お兄ちゃんアイスクリームとか買ってくれて優しかったな~。今でも全然優しいけどさ」
「う~ん、やっぱさ、やっぱヤバいよ。それって?」
「お兄ちゃん一時さ、学校の教師を言われのない理由で懲戒解雇されたときも暫く落ち込んでいたけど、立ち直って今は保育士の資格獲って、頑張ってるもんね。毎日いきいきとしてるよ」
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