第6話 一難去ってもいないうちにまた一難!?
私はサターン禍でメンタルを痛めてしまうまで(本編第14章 メンタルをご参照下さい!)あまり大きな病気をした事が無く、ましてや入院なんてした事がなかったので、自分が患者さまのベッドに横になっているのが非常に奇妙に思える。
……とは言え、点滴を刺され、それに加えて心臓カテーテル後の『止血カフ』をキツ~~く絞められていて(しかも両腕(泣))痺れて感覚が無い状態を俯瞰で見ると、やはり自分が入院しているんだ……と改めて認識した。
聞こえるのは空調の音と輸液ポンプの動作音だけだ。
せめて音楽でも聴きたいが、スマホは持ち込み禁止なので、それすらも出来ない(←当たり前)
……さっき墨台さんから連絡が入って、辰巻部長が母に私の状況を伝えて下さり、明日には入院道具一式を持って来てくれる……と教えてくれた。
とは言え、未だにサターン禍が収束した訳では無いので、面会禁止が継続されており、母に会う事は出来ない。
母は専業主婦なので、私が泊まり込みをしない限り、ほぼ毎日『おはよう』と『おやすみ』の挨拶をしていた。 それが出来ないって事が、こんなにも寂しくて辛いとは……。
一目だけで良いからお母さんに会いたい!
入院患者さまって、こんな寂しく辛い思いをしていたんだな……と、こんな状態になって初めて身に沁みて判った。
クスン
急に悲しくなって涙がこぼれたが、両手が動かせないので、拭く事さえ出来ないっ!
と、とにかく、明日にはお母さんが支援物資を持って来てくれる! それに期待して、もう寝よう!
枕に涙を擦り付けて目を閉じた。
疲れているので、こんな時は寝てしまうのが一番なのだが……
ここで、妙な感覚が訪れた。
頭が……痛い……!
腕も痛いが、頭痛がそれを上回って来た。
『人間は、複数の痛みを感じる事が出来ない』と聞いた事がある。 神経細胞には『周辺抑制』と呼ばれる機能があり、別の痛みが起きると、前の痛みが和らぐらしい。
確かに、痺れもあるせいか、腕の痛みはだんだん落ち着いて来たような気もするが、
な! 何!?
まさか、今度は……くも膜下出血でも起こした!?
……私が、まだ臨床検査技師の専門学校に通っていた頃、病院実習で『くも膜下出血』で亡くなった患者さまの病理解剖を見学した。
40代半ばの患者さまで体内臓器はとても綺麗だったが、頭頂部の頭蓋骨が外された途端、その場に居た全員が息を飲むほど、脳全体が赤黒く染まっていた。
その時の執刀の先生が仰った「……ここまでの出血があると、本人もかなり前から自覚症状があった筈だけど……無理しちゃったのかな……」……いう言葉は、今でも耳に残っている。
(この描写は、拙作『はい! 「はるか」です! 新米臨床検査技師の奮闘記』の第1章『解剖実習』をご参照下さい! ※注:解剖の描写があるので、苦手な方はお気を付け下さい! なお、こちらの新米の頃の『はるか』は、第2章以降、本編と比べて私生活を交え、コメディタッチの活躍をしておりますので、お楽しみ頂けますと幸甚でございますっ!(←堂々と宣伝!))
もしかして、この頭痛こそ、クモ膜下出血の痛みなのでは……?
急に怖くなり、私は急いで枕もとのナースコールを手にした
が!
ち、力が入らない!
指が完全に麻痺していた……
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