　今日から東戸中央クリニックのPCR検査センターに復帰だ。

　大きく深呼吸し、恐る恐る部屋に入ると、隅台さんと深田先輩が朝の準備をしてくれていた。

「恥ずかしながら……戻ってまいりました！」

「はるか〜！」

「遥さ〜ん！」

　深田先輩は優しく……

「辛い思いさせたね……これからは絶対無理しちゃダメだからな！」

　……と言って、私の肩に手を載せ、グッと力を込めながら言ってくれた。

「すみません……自分でもこんなコトになるなんて思っていなかったもので……」

　……と言うと、今度は隅台さんが……

「遥さんは、いつも笑顔で、真摯に仕事と向き合ってくれていました。　……多分、遥さん自身が『こうじゃなくちゃ自分じゃ無い』って呪縛に囚われてしまっていたのかも知れません」

　……と言った。　そして……

「これからの遥さんの目標は『頑張ってサボる』……だね」

　……と言ってくれた。

『頑張ってサボる』……か……。

　以前の私なら、もしかしたら少しムッとしてしまっていたかも知れない。　働いてお金を戴く事の厳しさは、幼い頃から祖父母や両親に聴かされていたからだ。

　……しかし、心を壊してしまった今、隅台さんの言葉は、その落ち着いたトーンと相まって、私の記憶と心に深く沁み渡った。

　隅台さんが仰る通り、私は『頑張らないとサボれない人間』だ。

　……いや、私だけじゃない。　特に日本人にはそんな人が多いように感じる。

　人手不足から、ひとりひとりにかかる仕事量が多い現在、巧くペース配分しないと、私のように働けなくなってしまう人が続出するだろう。

　本当に自分を護れるのは自分だ。

　あんな経験を二度としないように『頑張ってサボる』ように心掛けよう……と思った。

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。（ログインが必要です）

新規登録で充実の読書を

マイページ: 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる; 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める; フォローしたユーザーの活動を追える
通知: 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴: 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい