第7話 ヘルプ要員
朝食を食べていると、墨台さんからラインが来た。
『昨日はありがとう。 急で申し訳ないが、妻の陣痛が始まった』
そうか! もうすぐ墨台さんの6人目のお子様が産まれるのかあ!
『おはようございます』
『疲れはとれましたか?』
『こちらは大丈夫です』
『くれぐれもお気を付けて!』
『産まれたら写真送ってくださいね〜』
……と、
『さすが打ち込みはやいね』
いえいえ、中高生には負けますわよ
(〃∇〃)
『こんな状況なのに申し訳無い。 上の子供たちの面倒を見なくちゃならないから許して!』
『とんでもない!』
『最初から判っていたので』
『問題ありませんよ』
『普段、休めないから』
『お子様との時間を楽しんで下さいね』
『(≧∇≦)b』……墨台さん返信が来た。 やっぱりスタンプまでサムズアップだ(笑)
……
東戸中央クリニックのPCR検査センターは実質、私と墨台さんの二人しかいない。 辰巻部長からは、
……って事は……
墨台さんが復帰するまで、私一人でセンターを回さなくちゃならないって事!?
先が思い遣られる……(泣)
母が「さっきまで嬉しそうな顔をしてると思ったら、今度は泣いてる! 大丈夫!?」……と言って、私の顔を覗き込んだ。
私が上記の事を伝えると……「……
不安は拭えないが、悩んでいても仕方ない。
……出勤すると、センター前に、ふっくらした壮年の男性が待っていた。
「初めまして。 町野県北病院の事務から出向して来ました『盛山 宏』です」
「は、はい! 初めまして! 臨床検査技師の『
「はい。 つい先程、辰巻部長に言われて……」
トルネード、健在!
……
良かった良かった!
……と思ったのも束の間……
盛山さんは……行ってしまった……
私を残して……。
……理由は単純だ。
盛山さんの検体でサターンウイルスPCRの検査方法を説明していたら『陽性』だったんだ。
サターンウイルスは、人によって感染しても症状が出ない場合がある。
その翌日、町野県北病院から70件分のPCR検体が届く事になったのは言うまでもない。
……その後数回、自分の検体で検査を行ったが、幸い私は感染せずに難を逃れたのは不幸中の幸いだった。
……目に見えない『恐怖』との戦いは、まだまだ続く……。
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