第2話 猛威
……出向に関する話や、準備等の説明を受けたので結構遅くなり、家に帰ると父と兄貴が既に帰宅していた。
久しぶりに、家族4人で食事をした。 ……テレビでは、相変わらずサターンウィルスの猛威を報道している。
サターンウィルスは、電子顕微鏡で観ると『
(※作者注:『サターンウィルス』はフィクションです。 実在しないウィルスですが、『形状』以外の性質は、現在猛威を振るっている、某ウィルスと同様とお考え下さい)
……私は飲めないので良く解らない『サターンビール』と言う名前のお酒が、風評被害で売上が激減したらしい。 ……それに加えて、飲食店でのアルコール飲料の提供禁止命令が出て、お客さんが減ったお店が生き残りをかけて、必死になっているようだ。
『病気』以外にも苦しむ人達が大勢いる……。
……少しでも速く、そしてたくさんの人を検査してあげられれば、悲しむ人達が減るかな……? そうすれば、こんな私でも、少しは、お役に立てるかな?
……そんな事を考えながら……「私……明日から暫く、東戸中央クリニックに出向になるんだって」……と、家族に伝えた。
「そりゃ、急な話だな。 ……『東戸』だと自転車では、ちょっと遠いか?」……と、父が心配そうに言ったので……「駅から遠いし、バスも無いから……自転車で早目に出ようかな」と答えた。
「検査の仕事?」……と兄貴が聴くので、丁度サターンウィルスの検査シーンが映ったテレビを指差すと、家族全員が驚いた。
兄貴が……「おいおい! このご時世に『サターン』の検査かよ!? 危ないんじゃないの?」……と、珍しく真顔で言うものだから、ちょっと吹き出してしまった。
「大丈夫!
家族に、今日の、病院での事を説明した。
「……それは、光栄な事だな。 よし! 今度の休みに、皆で町野神社に行って、魔除けの御札を戴いて来よう」……と、信心深い父が言った。
兄貴が……「いや、これからお世話になるクリニックに近い『東戸神社』にお願いに行っ方が良くね?」と言った。
……確かに、少しでも感染リスクを減らすために、町野中央病院での明日からのシフトからは私は除外されてしまったんだ。 明日からは、町野中央病院に、私の居場所は無い……。
……ちょっと寂しい気持ちになった。
深田先輩や
「……そうね……町野にはいつ帰れるか……」と私がポツンと独り言のように言うと、母が「検査室の人達……
……そうだった! どうしても辛ければ、皆に相談すれば、きっと何とかなる! ……と自分に言い聞かせて、寂しい気持ちを吹き飛ばした。
……この時の私は、このウィルスとの戦いがあんなに長く過酷になるとは、想像もしていなかった……。
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