第2話 悪しからず

 真優…… 俺は、考え込んでいる『ハルさん』に話しかけた。


 「サム! 何か気付いたの?」


 気づいたも何も、もう、ツッコミどころ満載で、いっそ清々すがすがしいぞ!


「……。」


 まあ、良い。 そう言っちゃったら面白味も何も無いから、状況や証言を検証するとしよう。


 まず、死亡推定時刻と、お手伝いの加藤さんの証言だが、加藤さんが『テレビを消して云々うんぬん』と言っている事から、加藤さんは、ほぼ正確に時間を憶えていると見て間違い無いだろう。


 その時間に『大きな物音』が聴こえた…とすれば、 大家田おおやださんに何かが起きて死亡するに至った時間と、死亡推定時刻は合致する…わけだ。


 次に、兇器の『青酸カリシアン化カリウム』だが、現在は余程よほど、薬物業界に精通した人か、工業用しか入手出来ない。しかし逆に言えば、『蛇の道は蛇』で、入手する事は不可能じゃない。 


  但し、これを服薬させようとしたら、ひと苦労だ。 致死量は200mg……くすりのカプセル一つ分だ。 しかも、これが、確実に胃に到達して、胃酸と化学反応を起こさない限り、致死性の『シアン化水素』が発生しない。 


 もし、これをお酒や水に溶かして飲ませようとしても、あまりにもキツい臭気で、飲み込める物ではない……。


「……って、言うことは?」


『自殺』意外には、考えられないって事だ。


「ミーヤさん」ハルさんが声をかけ、もう一度、大家田さんの身辺の洗い出しを命じた。



 ……数分後


「ハルさーん」


 ……ミーヤさんだ。


 「被害者ガイシャさんの身辺調査をしましたが、被害者は、かなり高額の借金で首が回らない上、つい最近、妻に先立たれて、かなり落ち込んでいたようですー」

 

 ミオちゃんが「被害者と親しかった友人から、被害者が何度も『死にたい……』と洩らしていた……との、証言を得ました……。」


 ……決まりだな。


 ……こうして、この事件は俺の助言で解決した。


 彼らが捜査一課に戻ると、五木刑事長でかちょーが、窓際でブラインドに指を入れ、外を見ていた。


 ハルさんが「刑事長でかちょー、無事、事件が解決しました ……解決祝いに、このあと、一杯やりますか」……と言うと、


 五木刑事課長でかちょーが…「お前のおごりでな!」と言い、捜査一課が笑いに包まれた。




 『こんな事件で、わざわざ捜査一課が動くか!』……との、読者諸兄のお怒りは重々承知しているが、このストーリーの作者が…


「一度、テレビの刑事ドラマみたいな物語を書きたかったんだよ〜!」


 ……と申しているので、今回はしからずお許し願いたい……。

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