第6話 祈り

 翌日の就業後に、技師長と先輩がたに話して豆本を見て貰った。


 みんな喜んでくれて、特に技師長は「これで検査が増えて、収入が増えたら、はるか、よくやったね、大儲おおもうけだよぉ〜! 今日は一本つけるからね!」…と、知っている人は知っている、某有名アニメのセリフの物まねを披露してくれたほど、ノリノリだった。


 早速、技師長と私は、事務長の住石すみいしさんにはなしに行った。


 住石さんも褒めてくれて、著作権などのコストもかからない事から、稟議書りんぎしょの提出さえ無しで了承してくれた!


 その日から、暇を見付けては、カラーコピーした豆本作りをした。 時間がある時は、放射線室レントゲンや、事務の人…更には、他の部署の人たちまで協力してくれた。 嬉しくて、涙が出た。


 …私、良い時も悪い時も、泣いてばかりだ。…こんなに涙もろかったかな!?



 …しばらくして、帰宅途中に、『殿舞池』さん…のご葬儀のお知らせが貼り出されていた…。


 …たった一日いちにち、それも数分、お会いしただけだったが、この方と出会えた事で、もしかしたら、少しは同じ哀しみを減らすお手伝いが出来たかな…と思い、自転車で、式場の近くに行き…誰にも見られないように、そっと手を合わせ…


 『何のお役にも立てず、本当に申し訳ありません。 でも、貴女あなた様との出会いは、一生忘れません… どうか、安らかにお眠り下さい。』


 と、真摯しんしに祈った…。

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