第2話 …変貌

 数日後、再び美緒みおのお母さんから連絡が来た。 面会許可が下りたそうだ。 有給が余っているので、その翌日の午後、半休を使って、美緒の入院している病院に向かった。


 美緒のお母さんは、憔悴しきっていた。 お化粧もせず、髪も無造作に束ねただけだ。美緒は一人っ子なので、お母さんの心労は想像にかたくない。


 ずは娘に会って欲しいと言われ、病室に入る。


 そこには、頬のけた美緒の姿があった。…その変貌ぶりに驚いて立ち尽くす私を見て、美緒は左手を出して力無く微笑み、「真優まゆ」と小さくつぶやいた。


 その手を握り、何も言えないまま涙を流す私を見て、美緒も大粒の涙をこぼした。


 美緒が「サム…ちゃん…元気?」とつぶやいてくれた。 美緒は、絶対に言ってくれると思っていたので、病院を出る前に飛び切り笑顔の『サム』を描いて来たんだ。


 「みお〜! 久しい…な……」…喉が詰まって続く言葉が出ない…。


 「ありが…と」…美緒が目を閉じた。 寝息が聞こえ始めたので、美緒の左腕にタオルケットをそっと掛けた。 …ほんの僅か、表情が穏やかになったように見えた…。 


 美緒の病室を出るとすぐ、美緒のお母さんが立っていた。 手には、ミルクティーの缶を持っている。 …私の好みを覚えてくれてたんだ。




 待合いで、お母さんから話を聴く。


 …美緒が…自殺未遂……?

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