第8話 聖母
「お疲れっしたー」
お向かいさんのレントゲン室から、最後の技師が帰宅の途についた。
…他の部署は、外来が終われば掃除と翌日の準備をして、それで終わり…だが、検査室は、その後からの仕事が多い。
掃除や洗浄等は当然として
○各部署を回って検体等が無いかの確認と消毒
○各分析装置に問題が無いか調べる為の、
○生理学的検査室で使った装置の最終点検と、洗浄、消毒
○それぞれの部屋や、冷凍・冷蔵庫の温度・湿度の記録
○翌日の、入院・健診・予定外来の検体容器と伝票を作成し、それをダブルチェック
○院内の検査室で検査出来ない項目をピックアップして、外注ラックに入れ、外注依頼伝票を作成する
○手書きで報告していた検査結果をPCに入力して、正式な報告書を作成して、各部署に振り分ける。
これが終わると、やっと、日報作成と検査総計の記録…で業務終了…となる。
その日によっては、2時間以上かかる時もある。
しかし、この日は! 夜間呼び出しがあったので、技師長が特別に早く帰してくれた!
…外来延長で残業があったとは言え、いつもよりはかなり早い。
本屋さんに行って、マンガを物色したいが、今日は、めちゃくちゃねむたいので、直帰する事にした。
「ただいま〜」…と、家の玄関を開けると、良〜い香りが鼻腔をくすぐり、眠気が吹き飛んだ!
ミートソースパスタだあ!
母が作ってくれるパスタは絶品だが、中でもミートソースは、人類が触れてはならない領域に達しているんだ!
スリッパも履かず
お〜! 聖母〜!!
…父と兄はまだ帰宅していないが、本日は特別に、早く食べて良い許可が降りたので二人で食べた。 …勤務中、居眠りしてしまった事は、墓まで持って行こう。
…ミートソースは、私が殆ど食べ尽くしてしまったので、母が別のパスタを父と兄の為に作ったのは、言うまでもない。
入浴後、肌ケアもせずベッドに潜り込んだ。…さっきのミートソースが、体内から潤いを与えてくれる事を信じて、眠りについた。
『ブ〜〜、ブ〜〜』
AM1時、枕元でスマホが振動した…。
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